世界のためなら何度でも

第二章、抜け落ちた記憶

#128 世界の本当の仕組み

「ユイ……。」

「やっぱりいざ記憶を戻して会うってなるとちょっと恥ずかしい気もするわね。」

「俺、なんで忘れて…、こんなにも大切な人なのになんで。」

俺はよろよろと進み、ユイに抱きつく。

「ちょ、ちょっと！！気持ちはわかるけど急に抱きつかないで！！！！」

ユイは俺を突き放し、もう一度椅子に座り直す。

「聖夜が私のことを忘れてたのも無理ないわ。だって私・が・聖・夜・か・ら・私・に・関・す・る・記・憶・を・抜・き・取・っ・た・もん。」

は？

「ど、どういうことだ？ユイが自分から記憶を消したって。」

俺はユイに問いかける。

「私は聖夜が元の世界にいる間もこの世界を攻略しやすいように変えようとして禁止事項を破ってしまって4代目神王に呪いをかけられてしまった。その呪いのせいで全世界の生物の記憶から私という存在が消されてしまったの。」

ユイは暗い顔で話した後、すぐに笑顔になって、

「暗い話は一旦終わり！！ゼロちゃんとミルドくんにも世界を知ってもらうために世界の仕組みをもう一度説明するわね。」

ユイが指をパチンと鳴らすとダークがホワイトボードを取り出してくる。

「ざっと説明するとまず何もない空間から初代神王が生まれ、さまざまな世界を作り大いなる空間というものを作り上げた。そして次期神王を決めるため、何事も臨機応変に対応することができる種族である人間の中から最も優秀であった一つの一族、『神成』の人間を世界中にばら撒き、成長し体も心も発達してきたところで元の世界よりも過酷な『試練の世界』に転移させ、さらなる進化をさせ生き残った人間を次の神王にして余った神成や全ての試練の世界は無かったことにする。これが2代目までのルール。」

「2代目まで？ちょっと早すぎるんじゃないか？」

「ただここで事件が起こった。2代目神王、ゼルディア＝アイザックこと神成愛夜は自分の試練の世界さえも無かったことにされると知り、せめて自分の恋人だけでもとその恋人を試練の世界から追い出し、別の世界へと移動させました。それが原因で大いなる空間の均衡が傾き、何個かの世界で異常が発生してしまい初代神王はバグが起こらない完璧な方法を考えた。それは最初から予め神王になる人物を決め、その神王候補を既存の世界を『試練の世界』に書き換え、初代神王が決めた『物語』に沿って強化させていき、次の神王にして主人公以外に選ばれた神成は全員死ぬ。これが今も行われている方法なの。」

「初代神王もえげつないこと考えるな。それってつまり俺以外の全部の神成が死ぬってことだろ。」

「いえ違うわ。」

ユイは暗い顔で俺に一言、

「聖夜は主人公じゃない。だから神王にもなれないし初代神王によって殺される運命なの。」