世界のためなら何度でも

つぼっち

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第七章、最凶最悪の魔王

#147 痛み

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「ユイ!?」

俺はユイの元に駆け寄る。

ユイはかろうじて息をしていた。

しかし体の半分くらいが損傷していて沢山の生命維持器具を体につけている。

「マスター、やはりこの傷。魔術で受けた傷というより何か腐っている感じがします。」

「しかも体の主要部分を重点的にダメージ食らってます。おそらく人為的に行われたことだと。」

ミルドとゼロがそう言っていると医者が入ってくる。

「この腐食はおそらく呪いの類のものです。呪いの術者を倒さない限りじわじわと体が腐っていくかと……。」

「そんな……。」

その時、ユイが弱々しく俺の服を引っ張る。

「いっちゃダメ……、あいつには勝てない。それに私はもう大丈夫だから。」

そう言って何かの呪文を唱え始める。

「女神様!!今体力を消耗してしまったら本当に死んでしまいますよ!!」

「私は死んでもいいから、聖夜には生きててほしいから……。」

ユイの前に小さくて人が入れる大きさではないが穴がゆっくりとゆっくりと出現する。

「ごめんね。でももうすぐでできるから。」

ユイの出血が勢いを増し、生命維持装置のメーターがどんどん低下していく。

「やめろ!!このままだと穴ができたとしてもユイが死んでしまう!!!!」

俺はユイの腕を掴んで呪文をやめさせようとする。

しかしユイは辞める気配はないようだ。

「ごめんね。」

ユイは呪文の合間にポツリポツリと呟く。

「いくら聖夜に生きててほしいからって辛い思いも苦しい思いもさせてしまって……。」

ユイは涙を流しながらも詠唱をやめようとしない。

「他の人にも迷惑かけたよね。でも私は……、」

ユイの涙が血涙に変わる。

もう体が限界なんだろう。

「ただ、好きな人に生きててほしいかったきら……。」

「もうやめてくれ!!お前が死んだら元も子もないだろ!!」

俺がユイの両手を力強く握るとユイは詠唱を止めた。

しかし、ダランと力が入っていないように倒れる。

生命維持装置の数値が0になった。

「女神様!!」

医者が駆け寄り装置をいじくり回すが数値は0になったまま動かなくなった。

「ユイ!!ユイ!!!!」

俺が握った手はもう握り返してくれなくなっている。


キュッ


しかし、奇跡が起きたのか一瞬だけど微かに力が込められる。

「せ……………や…………………。」

「ユイ!!もうしゃべるな!!今医者が頑張ってるからもうちょっとがんばれ!!」

「も…………、無理……ちか……………ない……。」

「ユイ!!諦めるな!!!!」

「聖夜さんどいてください!!今から治療に入ります!!!!」

俺は医者に抑えられて部屋を押し出されようとする。

「ユイ!!ユイ!!!!お前をこんなふうにやったやつは誰なんだ!!!!」

「下がってください!!」

ユイはすこしいうのを戸惑っていたがやがて微かな力で口を開く。

「   。」

「な…………。」

俺は医者に部屋から追い出された。









医者が部屋から出てきた。

「女神様は……お亡くなりになられました。」

分かってはいた。

分かってはいたがそれを突きつけられた痛みが深く心をえぐり取る。

思わず何かにあたりたくなり壁を殴る。

殴った衝撃で壁に大きなヒビが入り、神殿自体が大きく揺れる。

「ま、マスター。」

「主人、あまり感情的になっては……。」

「…………ちょっといくべき場所が見つかったよ。」

俺は神殿の外に向かった。

ミルドとゼロが何かを叫んでいたがもう、大切な仲間の言葉さえも耳には入らなかった。
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