世界のためなら何度でも

つぼっち

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第二章、災をもたらす神々

D-13 【虚神】

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存在。

意味/あること。あるいは、いること。また、そのある(いる)何か(Wikipedia引用)


しかしアレイスターは困惑している。

本来目の前にいる敵がい・な・い・のだ。

何を言っているのか分からないと思うがいるのにいないのだ。

気配は人間大の姿を保っている。

しかし存在がない。

これをこの状況にあったことのない人間にありのまま説明することはできない。

本当に噛み砕いて超簡潔にまとめたのなら『確かに目の前にいるはずなのに肉眼でみることのできない』のだ。

その気配も大きくなったり小さくなったりを繰り返している。

「……変な感覚です。」

全神経を眼球にささげ、目を凝らせばゆらゆらと空間が歪んでいく様子を確認できる。

そして【復楽園】のサーチに引っ掛からないのだ。

復楽園は座標を探すことのできるほかに特定の生物の居場所を探知する副能力のようなものがある。

しかしそれに相手は引っ掛からない。

「ーーーーーーーーー。」

気配がスーッと薄くなっていく。

気配が辺りに充満しているのか?

そうしてアレイスターが当たり前のように息を吸ったその時、


ガクン


「なぁ!?」

右手がだらんと垂れたのだ。

まるで紐の切れた人形のように重力に従って垂れたのだ。

「くそっ!!」

アレイスターは必死に銃を撃つ。

しかし、

「!?た、弾が発射されていない!!」

確かに弾を込めてトリガーを引いたはず。

なのに弾は発射されないのだ。

そうこうしている間に左腕、両足と力が抜けていく。

足の力をなくしてバランスを崩したアレイスターはそのまま地面に突っ伏した。

「ガスか!!」

そうは言ってもガスではない。

空気とは別のものを肺に入れる時、若干喉に引っかかる感覚がする。

空気と水の中間のような喉越し。

水蒸気、いや

「霧だ!!霧のような脱力系ガスを撒き散らしやがったんだ!!」

アレイスターは必死に息を止める。

だがしかし息を止めてもなお微量の霧が身体中の穴から入ってくる。

「ーーーーーー。」

まるで高架下で声を発した時のように反響した声が辺りに響く。

アレイスターにはもはや立つ力も無くなっていた。

全身の筋肉が痙攣し心臓さえも動きをとまろうとしていた。

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

声も段々と薄れてきた。

まぶたさえも目を開けるということをやめ、パチリと閉じたまま開かなくなった。




奴はそのまま気配を消した。
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