世界のためなら何度でも

つぼっち

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第八章、死の神

D-67 力を得るという意味

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「こ、これはやばいぞ。」



聖夜は枯れた葉を手で触ってみる。



似たようなものを親友の『佐藤一』がやっていたがそれとこれはまるで次元が違った。



ハジメのものは水分を奪い木々を破壊する力。



しかしこれは木自体が『死んだ』のだ。



枯れた痕跡はない。



むしろ木は生き生きしている。



だが死んでいるのだ。



植物の命が消える時、ほとんどの場合枯れるはず。



しかしこの木は枯れる前に『死んだ』のだ。



「訳がわからない……。」



『わかる必要はない。これが神の力、『即死魔術』だ。本来は短い時間の接触が条件だが神器ゲルトビャリオンの力により掠めただけでも絶命させることができる。』



「な、なんだそのチート能力……。」



『汝もこの力を欲するか。』



「当たり前だろ、そんな力あれば最強じゃん。」



『……そうか、この力は手に入れようとすれば簡単に手に入る。』



「マジで!?」



『しかしそれ以上に最悪の苦痛が待ち受けている。能力を手に入れる時も、手に入れた後もだ。今も我の体は全身が焼けるように痛い。』



「…………。」



死神は神器の先をガンと地面に打ち付ける。



『我の友たちも同じ苦痛を伴った、我やウリエル、ザンギエル、そして貴様の中に眠るハニエルもな。』



聖夜はそれを聞いてどかっと地面に座り込む。



これ試合の最中なのにだ。



『何をしている?』



「聞かせてくれ。お前の、お前たちの話を。俺はお前たちを倒して先に進む、その倒す相手のことをもっと知りたいんだ。」



『…………貴様は傲慢な男よ。』



死神も聖夜の近くに座り込む。



『その前に、ハニエルよ。聞いているなら出てこい。』



死神がそういうと聖夜の股間からにゅっとハニエルが出てきた。



「えぇ!?どこから出てんの!?」



『久しぶり、アグナエル。』



『久しいな。』



「え、お前らって知り合いだったの?」



『うん、遠い昔のね。』



ハニエルの体が完全に俺から抜けると、ハニエルはアグナエルの膝にちょこんと座った。



『あれはここから遠い昔の話だ。』







我々の生まれた時代は今ほどではないがひどいものだった。



人間が光を見つけ、その影響で黒魔術が軍事利用され、住処を失った魔物たちはその光を人間よりも扱えるよう進化していった。



中でも神や天使は魔術を人間よりも早く習得し、人間を手中に収めた。



しかし人間にはそれをよく思わないものもいた。その結果我らは人間によって天界から引き摺り下ろされ、人間の魔術の更なる発展のためと体中をいじられた。



ウリエルは体を液状にされ人間に食された。



ザンギエルは脳に直接高濃度魔力を流され存在を薄くされた。



我は薬を飲まされ身体中に針や刃を刺され死という概念を超える実験台にされた。



ハニエルは人間の体内に無理やり吸収され自由を奪われた。











「それ全部人間が悪いじゃん。」



『……まぁそうだな。』



死神は呆れたようにため息を吐く。



『言っておくが自身の目的のために我々を傷つけている点においては貴様も同じだぞ。』



「んなこと知ってるよ。」



聖夜はパッと立ち上がる。



「俺は強欲で傲慢で暴食な男だ。それは昔も今も変わりはない、何か人助けをしたところでこの事実が変わるわけでもないし変える気もない。目的のために手段を選ばないのは人間のいいところでもあり悪いところでもあるからな。」



死神もスッと立ち上がる。



「お前何が目的で生きてるんだ?」



『それは……わからない。』



「だろうな、お前弱いもん。」



『な、我を愚弄するか!!』



「単に力が弱い奴より目的のなく彷徨うだけの奴の方がよっぽど弱いよ。」



聖夜は右手を真横に掲げる。



すると魔法陣が出現し、中からチェーンソウが出てくる。



「証明してやるよ、お前が弱いって証拠をな。」

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