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04・頼れる大人と言ったら…?

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そう、マリンとマロンは、ワガママで偉そうで大した頭脳もなく魔力もそこそこの第5王子の婚約者候補だったのだ…!
雷に打たれ、正気に戻る前の2人は、そんな事にも気付かなかった。
第5王子は、第4王子達と歳が離れているせいか、甘やかされて育てられ、こんな風になってしまったようだ。
そんな者の夫になるだなんて、正気の沙汰ではない。

そして、1年前のその頃に、家の裏の森で雷竜のタマゴを見つけ孵化させたのだった。


頭の足りないマリンとマロンでは、この先どうしたら良いか分からない。
前世の記憶の方は、その世界を俯瞰視点で見ているだけのような映像で、前世の生きて来た記憶を取り戻したと言うには程遠い物だった。
ただ、この国よりも断然に科学が進み、魔法が使えなくとも空を飛べる乗り物も存在すると言う事は知った。
そして、とても平和な地である事も。
そんな平和な世界を知り、このまま軍事国家のグロッシュラーで生きていきたいと言う思いはなくなった。

では、どうすれば良いのか…?
マリンとマロンの身近な大人は、ばあばしかいない。
父のマクシミリアン・グラッセは、マリン達が幼い頃から王宮に寝泊まりしていて、家に帰る事はなかった。
母親はマリン達が幼い頃に亡くなった。
だから、2人を見てくれたのは、高齢のばあばだけだ。
その為、厳しい家庭教師などを付けられる事もなく、自由奔放、魔法は天性の才能で自由に使いこなす事に恵まれたが、その分頭はあまり良くなかった…。

「よく考えてみれば、お父様の顔、もう思い出せないかも。」
「そう言えば…。」
マリンとマロンは、腕組みしながらうーんと想像する。
それ程に父とは会っていなかった。
そんな父に、情も恨みも何もない。
郊外ではあるけれど広大な土地、大きな屋敷、大金を残してくれているお陰で、裕福に過ごせた。
父や母がいない事を淋しいと思う知能すらなかったのは、もしかしたら幸せだったのかもしれない。
そしてそれを想像する事が出来るようになった今も、今更過去を思い返して淋しいと感じる事はなかった。
あの頃の自分達は幸せだった…としみじみ思うだけ。
ただ、このままバカのままでは、あの予知夢のように断罪され、犯罪者とされてしまう。

後、頼れる大人と言ったら――――。
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