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15・屈辱の謝罪
しおりを挟む「彼女がっ、私に足を掛けて、転ばせて来たのですっ…!」
『え、フロアちゃんっ。』
『まさかっ!?』
ティアの発言に皆が大きく目を見開き驚き固まる中、フロアは握った拳を震わせ。
「わ、私っ、そんな事してませんっ!!」
悲痛な顔をしてメロウ王子に訴えた。
「フロア…、お前…。」
お前ならしでかしてもおかしくない。
メロウ王子はそう言いたげにウンザリとため息を付きながらティアの肩を抱く。
「オレも、彼女がティアの前に足を出すのを見ました。」
フロアが更に声を上げる前に、身を乗り出すようにロックが声を上げて来た。
『え、ティア?』
『呼び捨てなの?』
マリンとマロンは声を出さずに顔を見合わせる。
「…大方、ティアに嫉妬して嫌がらせをしたのだろう…。
フロア、お前の好意に悪い気はしていなかったが、もう初等科ではないのだから、幼稚なイジメは許さんぞ。」
「っ。」
真剣な瞳で王子に睨まれ、フロアは言葉を失った。
「ほら、ティアに謝れ。」
「っっ。」
「王子、私はそこまでして貰わなくても大丈夫です。」
「いや、フロアの捻くれた性格はここらで直って貰わねば、候補生として相応しくない。
お前のチャチなプライドなどいらんから、ティアに謝り今後は行動に気を付けろ。」
フロアを見下ろすメロウ王子と、嘲笑を喉の奥に隠しながら王子の隣でフロアを見下ろすティア。
ティアの下劣な笑みに気付いているのは、同じ女である候補生達全員だが、男達はまるで気付いていない。
「っ……、ティアさん…、申し訳、ありません…。」
屈辱に声を震わせながらも、フロアはゆっくりと頭を下げた。
それを見ていたマリンとマロンもフロアの気持ちに同調し、涙が溢れ出そうになる。
「いえ…、まだ少し痛みますが、多分大丈夫です。」
慈愛の笑みを浮かべているつもりなのか?
マリン達にはティアの歪んだ笑顔が不気味に見えた。
「もう下らぬ事をするなよ。
次はないからな。」
「ーーーー。」
次はない――――。
次に候補を外れるのは、フロアと言う事か…。
フロアは頭を下げたまま体を震わせていた。
その横を、ルイス、ロックと続いて出て行き、やっとドアが閉まった。
「っ、フロアちゃんっ!」
マリンとマロンは慌ててフロアに駆け寄る。
そして下げ続けたままの頭を上げさせ、両脇から体を支えてやる。
「何故、あんな事を…。」
フロアの後ろに居たシータがため息交じりに尋ねる。
どうやらフロアがティアに足を掛けたのを、シータも見ていたようだ。
「だってっ…!
あの女っ!!
メロウ王子の腕にへばりついて、ベタベタと!
そこは私のポジションだったのにっ、あんなポッと出の女にっ!!
メロウ王子を本気で好きなのは、私だけなのにっ!!」
わぁぁっと、事切れたかのようにフロアは大声で泣き出した。
『そうだよね…。』
『確かに、メロくんを本気で好きだったのは、フロアちゃんだけだったよね…。』
「相手は、貴女よりも一枚も二枚も上手のようですよ。
彼女に悪事を働けば、先程と同じような展開が待ち構えているでしょう。
もう二度とあのような事はしない方が良いと思います。」
「シ、シータちゃん…。」
シータの言葉は辛辣だが、それはどれも真実…。
「あの女、瞳の奥で私の事を見下してた…!!!」
膝の腕で拳を握り締め、絞り出すように苦し気に吐き出すフロア。
マリンとマロンはヨシヨシと背中や腕をさすってやる事しか出来ない。
「どういうツテで、王子の婚約者候補になったのか分かりませんが、油断はしない方が良いでしょう。
あの2人の側近も何だか怪しく見えました。」
「ーーー。」
確かに。
初等科の時は候補生達しか同じクラスにいなかったので、皆それなりに仲良くやれていた。
だが、高等科になり、環境が激変してしまい、王子も何となく変わってしまった。
「もうお茶と言う雰囲気ではありませんね…。
私はもう行きます。」
シータはそう言って小さくお辞儀をすると出入口のドアに向かって足を向ける。
「シータちゃん…。」
「……、貴女達も気を付けて下さい…。」
チラリとマリンとマロンを見た後、シータは出て行った。
残されたフロアとマリン、マロンは、フロアの気が済むまで愚痴を聞かされ続けるのだった。
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