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しおりを挟む「……一緒に住むって、また突拍子も無いなお前。」
少しの沈黙を破ったのはレンだった。
「セナ、なんだか凄い!!」
感嘆の表情を浮かべるハルの頭を撫でながらニコニコしてるセナが、一瞬チラッとこっちを見た。
「4人って……」
てっきり、今日で4人で会うのは最後だとか、そんな事を告げられるのかと思っていた。少しの安堵と新たな戸惑いはあるけど、セナの問いが自分にとっては余りにも大きくて、少しむず痒いせいなのか、どうしても自分には持ち合わせていないはずの、トゲトゲしい感情を感じてしまっていた。
「そう、4人で。」
セナは、いつも急で強引で…。
「そんなの無理に決まってるじゃん」
ホントに自分勝手で…。
「無理じゃないよ。」
私にはわかる。
「むり、私は行かない」
この人は
「おれの方が無理」
「ゆいちゃんが居ないと何も始まらないもん。」
"私の為"なんだろうな。
「でもさ」
心底どうでも良さそうに私たちを眺めていたレンが口を開いた。
「一緒に住むったって、なんか目星ついてんの?部屋だとかなんだとか。おれよく分かんねえけど色々あんだろ。」
わあ、珍しくまとも。
「無いって言ったら嘘になるかな、色々準備したいからレンとハルちゃん学校休みの時、みんなで合わせてちょくちょく東京行きたいんだけどどう?」
セナの持ち前の"強引さ"が遺憾無く発揮されてる今、4人で住むってことを拒否する人は誰も居なかった。
私たちにとって、物凄く大きな決断なはずなのに余りにもあっさりと話が進んでくことに違和感を感じる人間なんて、もうこの場には居ないはずだ。
「ねぇ、レンくん言わなくていいの?」
何やらコソコソとレンに話しかけてるハルと、少し怪訝そうな表情のレンに私とセナが目をやると、レンがめんどくさいと言わんばかりの顔をしながら口を開いた。
「おれ、高校辞めた」
……お前もか。
「まじ?おれらおそろっちだね」
そんなお揃い要らないだろ。
「これで4人中3人が高校中退か~。おれら終わってんな。」
そう言いながらも楽しそうにニコニコしているセナ、危機感持った方がいい状況なのに、嬉しそうにしてる感じ相変わらず不思議ちゃんだ。
「それで、みんなで時間合わせて東京って、一体何しに行くの?」
「実はさ、もう家はあるんだよ。郊外にはなっちゃうんだけど。」
親戚が持ってる空き家が東京にあって、自分たちで光熱費やら何やらをちゃんとするなら好きに使っていいと言って貰えたらしい。
「もうあるんだろ?何の準備があるんだよ。」
「いや~、結構放置されてるとこだから色々片付けたり、自分たちで壁塗り直したりしたいんだよね。」
めっちゃ青春って感じ。
「なんだか凄い!!楽しそう!!」
青春が大好きであろうハルは、もうその日まで待てないと言わんばかりにテンションが上がっている。
「ゆいちゃんもバイト休み取ってね!」
ハルがキラキラした目を向けてそう頼んできて断れる人間はそう居ないだろう。
「東京か、新幹線今のうちに取っといた方がいいよな。」
「あー、おれ車出すから大丈夫だよ。」
「車?誰に出してもらうの?」
「だからおれだって。」
………………。
「またお前は知らねえ間に。」
いつの間にか免許を取って車も持ってるセナに一同驚くと同時に、こいつが何者なのか分からなくなってる自分がいる。
「…じゃ、じゃあセナにその辺は任せよっか。」
ハルがその場を仕切り直して、日程やら何やらを予め決めて、この日はその場を後にした。
「ゆいちゃん」
セナのバイクから降りて、ヘルメットを渡そうとした時セナが穏やかな声色で名前を呼んだ。
なに?
ひとりじゃないよ。
はい?
ゆいちゃんはもうひとりじゃない。
……。
みんなずっと一緒だから。
はいはい、おやすみ。
あの時言った言葉、忘れてないよ。
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