77 / 78
Move
2
しおりを挟む結局言われた通りに支度を済ませ、少しだけ待ってると外からいつものバイクの音が聞こえた。
その音を合図に、家を出て下に降りてくとわざわざヘルメットを外して、バイクから降り、私に駆け寄ってくるいつものアイツがいた。
「おまたせゆいちゃん。」
「触んな」
折角整えた髪の毛を、まぁ崩さないように優しくではあるけどわしゃわしゃっと撫でてくるセナの手をぶっきらぼうに払うと「怒んないでよ~」とおどけて言ってくるセナ。
何だかその姿に変な安心感があり、さっきまで抱えていた空虚な気持ちは飛んでいく。
「レンももう向かってるって言ってたからちょっと急ごっか。」
レンも呼んだんだ。
何だかんだやっぱりこの4人が安定で、自分で言うのも何だけどカイト達には混ざりきれないような、そんな私たちだけの関係がある。
初めて会った時から、近いのか遠いのか分からない変な距離感ではあるけど、会う度にその1回が濃い思い出を残す私たちは、きっと特別な関係なんだろうって最近実感する。
あの時から変わらず、私の中で安心感をくれるこのタンデムシートに跨り、セナに身体を寄せ、急いでいるせいかいつもより少し粗めな走り方をするセナに、振り落とされないようにただしがみついて、目的地のあの海に向かった。
駐車場に着き、相変わらずバイクから降りるや否やタバコに火をつけるセナと2人で、自然と歩幅を合わせいつもの階段に向かう私たちより先にそこで待っていた2人が、仲睦まじく迎えてくれ、いつものように階段に腰をかけ、相変わらず寂しそうに波の音を立てる"私たちの海"を眺めながら談笑をしていると、レンがみんなを代表してこの不思議ちゃんに尋ねた。
「てかさ、いきなり呼びつけてどうしたん。なんかあった?」
それまで電話で喋ってた私達もあまり状況を把握してないんだから、そりゃレンはもっと不思議に思うよね。
「ん?あー、そうだったね。真面目な話今からするからお前らも真面目な顔して聞いて。ちなみにゆいちゃんと結婚する話ではないよ。」
何ともふざけた切り出し方をするセナを横目に、全員が真剣な面持ちで望むと、それまでヘラヘラしてたセナが少し真面目な顔になり、そして…。
「3人ともさ、迷惑じゃなければ何だけどね。おれ、学校辞めた頃からずっと考えてたことがあってさ。これは誰か1人でも反対だったら無かったことにして欲しいんだけど。」
伝わる。セナが緊張してるのが嫌ってほど伝わる。
何を言われるのか、私までドキドキするし、もし私にとって嫌な事だったらどうしようと考えてしまう。それが怖くて今日は行きたくなかった。でも、こんなに真剣に自分の考えを言おうとしてくれてるんだ。
少し言うのを躊躇っていたセナが口を開いた。
「おれらさ、4人で一緒に東京住まない?」
一瞬、頭の中が真っ白になったのがわかった。
期待と不安と、現実的で非現実的な、確実に私たちの人生を動かすセナの提案に、全員が息をするのを忘れてそんな提案をしたセナを注視していた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる