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第2王子とエイミー
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「ええ、コモン様にはよくしていただいておりますの。目立たないようにと我が家から護衛騎士と侍女を一人ずつしか連れて行かないのですが、本を探したりするときに王妃殿下にはたくさんの騎士がついているからと一人の騎士だけでは危険だろうとおっしゃられて、コモン様がついてきていただくことが多いのですわ。王妃様にも恐れ多いからお止めくださいと言ったのですけれど、一人では危ないからと……」
フィーネにとって図書館の中は自宅並みに安全性の保障された空間のような気もする。いつも考えることなく館内を闊歩しているから。
ミリアに視線を移す。
俯くミリア様は妖精か女神かという美しさだ。
本当に第2王子は馬鹿だ。
「コモンは学園に在学していた時でも教科書ぐらいしか本を開いたことがない無骨といえば聞こえはいいのですが、本物の筋肉馬鹿でして」
途中で入室した父が額から流れる汗を拭きながら苦笑する。
「そうでもありませんわ。わたくしは小説ばかりですが、コモン様は剣や武道、騎士列伝……などという武道に関する専門書をよく借りていらっしゃるようですわ」
本の読める筋肉馬鹿だとフィーネが苦笑する。
何とも言えない空気が流れたとき、プレスト公爵が話を断ち切るように咳をした。
「コモン殿についても後日グルーデン伯爵に話があるのだが、今日はフィーネ嬢に話があってきたのです。フィーネ嬢、先日はありがとう。ミリアを救ってくれて」
プレスト公爵が深い礼をする。
「ま、待ってください。わたくしは何もしておりませんわ」
「ミリアはこう見ても小さい頃はおてんばでね。騎士に混じって剣を振り回していたんだ。だからだろう、婚約破棄の直後のフィーネ嬢の動きも見てしまったらしくて」
公爵は小さく笑った。
「見られていたのですか?」
父が慌ててミリアを見る。
「あのように動きのいい令嬢を始めてみましたわ」
「やはり見られてしまっていたのですね。誰にも見られていない。大丈夫だと言い張っていたがフィーネもまだまだだな」
父が呟く。
「……ですが、フィーネは王子殿下のほうへ倒れたことになっております。ですので、これからもそれで話を通したいのですが」
「もちろん、この話はこれ以上しなくて大丈夫でしょう。ただ、その時フィーネ嬢がミリアを助けなければミリアは第2王子から婚約破棄だけでなく暴力を受け国外追放を言い渡される予定だったらしい。フィーネ嬢に助けられたのは本当です。わが公爵家はフィーネ嬢にこれ以上ないくらいの感謝の気持ちを抱いています。もちろん第2王子に関 しては王家へ厳重な抗議を行っている所です」
ミリア様を助けてよかった~と思う間もなく、我が伯爵家の玄関辺りから騒ぎが聞こえ始めた。
「伯爵! 門を押し入って第2王子と男爵令嬢が来られています。中に入れろと!」
男爵令嬢って誰だった?
あのミなんとかって人は平民だったはず。
侍従が慌てた様に部屋に入ってきた。
「入れるな!」
父が叫ぶ。
「もう入ってこられました、すでに」
「どこに」
「王子殿下でしたので止められませんでした」
「私だ!」
第2王子殿下がだらしなくドレスを着崩した男爵令嬢を連れて開いたドアの前に立っていた。
平民と思いこんでいたが男爵令嬢だったらしい。
そこは間違ったらだめよね。
側にいたミリア様からこっそりエイミー様のことを教えていただいた。
手堅い商売がうまくいっているということが理由の新興の男爵令嬢のため、誰も知らなかったらしい。
「第2王子! そして、まあ男爵令嬢! 名前はなんでしたっけ? だめだわ。名前を忘れた」
フィーネは考える前に声に出してしまう。
「エイミーよ! 失礼ね」
私の呟きを聞き逃さなかった男爵令嬢を唾を飛ばして名乗った。
フィーネにとって図書館の中は自宅並みに安全性の保障された空間のような気もする。いつも考えることなく館内を闊歩しているから。
ミリアに視線を移す。
俯くミリア様は妖精か女神かという美しさだ。
本当に第2王子は馬鹿だ。
「コモンは学園に在学していた時でも教科書ぐらいしか本を開いたことがない無骨といえば聞こえはいいのですが、本物の筋肉馬鹿でして」
途中で入室した父が額から流れる汗を拭きながら苦笑する。
「そうでもありませんわ。わたくしは小説ばかりですが、コモン様は剣や武道、騎士列伝……などという武道に関する専門書をよく借りていらっしゃるようですわ」
本の読める筋肉馬鹿だとフィーネが苦笑する。
何とも言えない空気が流れたとき、プレスト公爵が話を断ち切るように咳をした。
「コモン殿についても後日グルーデン伯爵に話があるのだが、今日はフィーネ嬢に話があってきたのです。フィーネ嬢、先日はありがとう。ミリアを救ってくれて」
プレスト公爵が深い礼をする。
「ま、待ってください。わたくしは何もしておりませんわ」
「ミリアはこう見ても小さい頃はおてんばでね。騎士に混じって剣を振り回していたんだ。だからだろう、婚約破棄の直後のフィーネ嬢の動きも見てしまったらしくて」
公爵は小さく笑った。
「見られていたのですか?」
父が慌ててミリアを見る。
「あのように動きのいい令嬢を始めてみましたわ」
「やはり見られてしまっていたのですね。誰にも見られていない。大丈夫だと言い張っていたがフィーネもまだまだだな」
父が呟く。
「……ですが、フィーネは王子殿下のほうへ倒れたことになっております。ですので、これからもそれで話を通したいのですが」
「もちろん、この話はこれ以上しなくて大丈夫でしょう。ただ、その時フィーネ嬢がミリアを助けなければミリアは第2王子から婚約破棄だけでなく暴力を受け国外追放を言い渡される予定だったらしい。フィーネ嬢に助けられたのは本当です。わが公爵家はフィーネ嬢にこれ以上ないくらいの感謝の気持ちを抱いています。もちろん第2王子に関 しては王家へ厳重な抗議を行っている所です」
ミリア様を助けてよかった~と思う間もなく、我が伯爵家の玄関辺りから騒ぎが聞こえ始めた。
「伯爵! 門を押し入って第2王子と男爵令嬢が来られています。中に入れろと!」
男爵令嬢って誰だった?
あのミなんとかって人は平民だったはず。
侍従が慌てた様に部屋に入ってきた。
「入れるな!」
父が叫ぶ。
「もう入ってこられました、すでに」
「どこに」
「王子殿下でしたので止められませんでした」
「私だ!」
第2王子殿下がだらしなくドレスを着崩した男爵令嬢を連れて開いたドアの前に立っていた。
平民と思いこんでいたが男爵令嬢だったらしい。
そこは間違ったらだめよね。
側にいたミリア様からこっそりエイミー様のことを教えていただいた。
手堅い商売がうまくいっているということが理由の新興の男爵令嬢のため、誰も知らなかったらしい。
「第2王子! そして、まあ男爵令嬢! 名前はなんでしたっけ? だめだわ。名前を忘れた」
フィーネは考える前に声に出してしまう。
「エイミーよ! 失礼ね」
私の呟きを聞き逃さなかった男爵令嬢を唾を飛ばして名乗った。
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