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3.泣きごと

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弾丸に同行して帰ってきたら何か騒がしい
「何かあった?」
リビングで作品作りをしているバルドさんに尋ねる

「双子が凹んでるみたいだよ」
「あいつらが?」
「ああ。とくにお姫様がかな」
俺は首を傾げる
だって今日は孤児院に剣術や魔法を教えに行ってたはず
そこに凹む要素が浮かばない
でも上から2人の荒れた声とシャノンの泣き声が聞こえるのは事実だ
俺は魔道具の冷蔵庫から冷たい果実水を取り出して一気に飲み干した

「シア、コーヒーくれ」
「俺もな」
カルムさんの言葉に父さんが乗っかる
これはアランさんとトータさんも飲むパターン
俺は4人分のコーヒーを淹れてテーブルに置いた

「お、分かってるねぇ」
トータさんが嬉しそうに言う
「流石に覚えるよ」
俺は苦笑して返す

「それにしてもシャノンの声は相変わらずよく通るなぁ」
アランさんが呟くように言う
みんなもう慣れたもので大して気にはしていない
シャノンはこの家に生まれた最初の女の子だったから、皆がこれでもかって程チヤホヤしたんだ
暫くしてミリアが来るまでお姫様扱いだった
そのおかげで甘えるのはお手の物で、皆が自然とフォローするから失敗した時の凹みようは酷い
そう考えると半分以上周りのせいだよな…
救いは我儘度合いがさほど強くない点だと思う
皆冒険に関しては命がかかってるから、普段ほど甘やかさなかったのが良かったのかな?

「とりあえず、様子を見てくるよ」
俺はいつものようにシャノンの部屋に向かう
子供のころからシャノンが泣いてるのをあやすのは俺の役目みたいになってたせいで、それが今でも続いてる感じ

「シャノン入るぞ」
声をかけてからドアを開けると…
「うぉっと…」
シャノンが飛びついてきた
しがみ付いて泣くシャノンの背をなでながらソファーに促すと、ソファの上で足を抱えるように座る

「何があった?」
いつものようにシャノンに向かい合う様にソファーテーブルに座るとシャノンは泣きながら訴えて来る

「全然出来る様にならないの!」
「出来るように?ああ、孤児院で魔法を教えてる相手がか?」
「ん」
「私ちゃんと教えてるのに誰も出来る様にならないの。こんなんじゃわかんないって言われるしもうやだよぉ」
あ~うん。教えるのは難しいんだよな…
俺やマリクは下のチビに教えたりする立場になることが多かったけど、シャノンは教わるの専門
それにこの家でシャノン達は冒険者としては最年少

「シャノンはどんなふうに教えてたんだ?」
「…いつもやってるみたいにこうやってするのって水魔法を使って見せて教えた」
おぅ…

「それから?」
「そしたらわかんない!って言われるから何回も繰り返したよ?」
「そうか…」
これはどうするべきか…
母さんは絶対こうなるってわかった上であの条件を出してるんだよな?
その上であえてシャノンにさせたってことは何か意味があるはず

初めて魔法を教えてもらった時はどうしてたっけ…
確かリアムと一緒に教えてもらったんだよな
俺は子供の頃の記憶を引っ張り出した


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