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3-88.令嬢誘拐事件
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「実はファシスネーションフラワーの事で事件があってな」
「事件…」
コーラルさんの言葉に俺は母さんと顔を見合わせた
疲れ切った表情からも何となくいい報告ではないと予想はしてたけどそのまさかだったか
できればこの予想は外れて欲しかった…
「3年ほど前から王都で令嬢が誘拐される事件が増えていたんだが…」
「令嬢…てことは貴族だよな?」
間違っても平民に対してその言葉を使うとは思えなかった
「そうなるな。爵位に統一性はなく共通点があるとすれば容姿の良いという点のみだった。家同士の婚約も調った者が大半で貴族の間では結構な問題になっている」
「3年って結構な期間だけど、それがあの花と関係あるってこと?」
俺の問いにコーラルさんは頷いた
俺の中では令嬢尾誘拐と花の間に繋がりが全く見いだせなかった
「シアのくれた地図を元に張り込みをしたら見事に獲物が釣れてね」
獲物…
コーラルさんらしい表現に苦笑する
「現れたのは年配の女性3人。その場で捕まえても切り捨てられて終わりだろうと判断した手の者が、女性たちの後をつけた」
「賢明な判断だな」
父さんがボソッと呟いた
「彼女たちが入ったのはある貴族の屋敷でね、敷地内の小屋の中では彼女達とは別の女性3人が作業をしていた」
「作業?」
「女性たちが摘んでいた白味の強い花と赤味の強い花の蜜を抽出して加工していたと言えばわかるかな?」
白味が強いのは睡眠効果、赤味が濃いのは媚薬成分が高い
その答えは考えるまでもなかった
「睡眠薬と媚薬の製造」
「その通りだ。もっとも効能が検証されてるわけではないし製品と認められていないからもどきだがね。現場を押さえて屋敷を家宅捜査したらなんと…」
コーラルさんはそこでいったん口を閉じてコーヒーを飲んだ
こういうところは貴族って感じがする
見せ方とか引き付け方とかそういうのを心得てるって感じ
「屋敷の中には行方不明になっていた女性たちが軟禁されていた」
「軟禁…でも監禁じゃないなら逃げれないわけではない…?」
「いや、媚薬もどきで正気を失わせて男をあてがい、ことが済んだら睡眠薬もどきで眠らせる。だから繋がれていなくても逃げ出すことも、それ以前に逃げようと思うこともなかっただろう」
「ひどい…」
レティはつぶやきながら拳を握りしめていた
俺はそっとその手を握る
「あてがわれる男はその貴族が伝手を欲する男達だった」
「彼女たちは…?」
「どうやら睡眠薬もどきも媚薬もどきも酷い中毒性がある様でね、大半が既に過剰摂取させられていて成分が切れれば発狂することもある。元には戻らないだろうと診断された。」
「…ある意味戻らない方が幸せかもしれないな」
父さんの言葉に沈黙が広がる
正気に戻れば自分が何人もの男と関係を持たされていた事を認識することになる
この世界の貴族はどうも見た目に対するこだわりが高い
容姿のいい令嬢であればそれだけで釣り書きも増える
でも血筋を同じように重んじる以上、複数の男と関係を持った令嬢を望むのは、後妻としてか問題のある子息くらいだ
果たしてその事実に耐えられるのか?
答えはおそらくNoだ
いずれにしても令嬢たちはそれぞれの家に戻し、その先の選択は各家の者にゆだねることになったらしい
家族がこれまで探してたとしても、両親が令嬢を政略の道具としてしか見ていなければどうなるかは分からない
俺達はただ、親身になってくれる家族がいることを願うしかない
『どんなスキルがあっても何もできないのが歯がゆいわ』
母さんの零したその言葉が頭の中で繰り返されていた
「事件…」
コーラルさんの言葉に俺は母さんと顔を見合わせた
疲れ切った表情からも何となくいい報告ではないと予想はしてたけどそのまさかだったか
できればこの予想は外れて欲しかった…
「3年ほど前から王都で令嬢が誘拐される事件が増えていたんだが…」
「令嬢…てことは貴族だよな?」
間違っても平民に対してその言葉を使うとは思えなかった
「そうなるな。爵位に統一性はなく共通点があるとすれば容姿の良いという点のみだった。家同士の婚約も調った者が大半で貴族の間では結構な問題になっている」
「3年って結構な期間だけど、それがあの花と関係あるってこと?」
俺の問いにコーラルさんは頷いた
俺の中では令嬢尾誘拐と花の間に繋がりが全く見いだせなかった
「シアのくれた地図を元に張り込みをしたら見事に獲物が釣れてね」
獲物…
コーラルさんらしい表現に苦笑する
「現れたのは年配の女性3人。その場で捕まえても切り捨てられて終わりだろうと判断した手の者が、女性たちの後をつけた」
「賢明な判断だな」
父さんがボソッと呟いた
「彼女たちが入ったのはある貴族の屋敷でね、敷地内の小屋の中では彼女達とは別の女性3人が作業をしていた」
「作業?」
「女性たちが摘んでいた白味の強い花と赤味の強い花の蜜を抽出して加工していたと言えばわかるかな?」
白味が強いのは睡眠効果、赤味が濃いのは媚薬成分が高い
その答えは考えるまでもなかった
「睡眠薬と媚薬の製造」
「その通りだ。もっとも効能が検証されてるわけではないし製品と認められていないからもどきだがね。現場を押さえて屋敷を家宅捜査したらなんと…」
コーラルさんはそこでいったん口を閉じてコーヒーを飲んだ
こういうところは貴族って感じがする
見せ方とか引き付け方とかそういうのを心得てるって感じ
「屋敷の中には行方不明になっていた女性たちが軟禁されていた」
「軟禁…でも監禁じゃないなら逃げれないわけではない…?」
「いや、媚薬もどきで正気を失わせて男をあてがい、ことが済んだら睡眠薬もどきで眠らせる。だから繋がれていなくても逃げ出すことも、それ以前に逃げようと思うこともなかっただろう」
「ひどい…」
レティはつぶやきながら拳を握りしめていた
俺はそっとその手を握る
「あてがわれる男はその貴族が伝手を欲する男達だった」
「彼女たちは…?」
「どうやら睡眠薬もどきも媚薬もどきも酷い中毒性がある様でね、大半が既に過剰摂取させられていて成分が切れれば発狂することもある。元には戻らないだろうと診断された。」
「…ある意味戻らない方が幸せかもしれないな」
父さんの言葉に沈黙が広がる
正気に戻れば自分が何人もの男と関係を持たされていた事を認識することになる
この世界の貴族はどうも見た目に対するこだわりが高い
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でも血筋を同じように重んじる以上、複数の男と関係を持った令嬢を望むのは、後妻としてか問題のある子息くらいだ
果たしてその事実に耐えられるのか?
答えはおそらくNoだ
いずれにしても令嬢たちはそれぞれの家に戻し、その先の選択は各家の者にゆだねることになったらしい
家族がこれまで探してたとしても、両親が令嬢を政略の道具としてしか見ていなければどうなるかは分からない
俺達はただ、親身になってくれる家族がいることを願うしかない
『どんなスキルがあっても何もできないのが歯がゆいわ』
母さんの零したその言葉が頭の中で繰り返されていた
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