[完結]Believe~あなたの幸せを~

真那月 凜

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2.発作

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「瑞穂帰ろ!」
「律チャン。ちょっと待ってね」
瑞穂は携帯でメールを打ちながら歩き出す

「椎名君?」
「うん。今日も練習キツかったって」
「相変わらずだね。もう半年でしょ。寂しくないの?」
「…行ってって言ったのは私だから寂しいなんて思う資格ないよ」
「そんな事無いでしょ。ちょっとくらい寂しいって言っとかないと必要ないって思われるよ?」
「それはやだなぁ。でも困らせたくないの。」
瑞穂はそういって笑った

「それにバイト代溜まったら会いに行けるし」
「まぁあんたがそれでいいならいいけどさぁ」
律子は腑に落ちない感じで言う

「…私ね」
「ん?」
「海莉にはお兄ちゃんの分まで鳳凰学園でサッカーを思いっきりして欲しいの」
「瑞穂…」
「お兄ちゃんの叶うはずだった夢を私が壊したから…お兄ちゃんが一番可愛がってた海莉だからよけいにね」
「…瑞穂顔色悪くない?」
「そう?気のせいでしょ」
瑞穂は微笑む

でも次の瞬間瑞穂の顔は蒼白になり道に倒れこんだ
「瑞穂…!」
律子は慌てて救急車を呼んだ

「お兄さんと椎名君に…」
「だ…め…」
「え?」
「海莉には…言わな…で…」
瑞穂がそういったとき救急隊員がクビを傾げる
「この状態で喋れるとは…」
その言葉に律子は大きな衝撃を受けた
携帯にかけた指はもう動かなかった

海莉に心配をかけたくないという思いの強さに胸を抉られたような気さえしていた
病院で救急治療を受けそのまま病室へ移された瑞穂は暫く眠り続けていた

「律子ちゃん」
ドアが開いて右足を引きづりながら男が入って来た
「忍さん…」
律子はすぐに視線を瑞穂に戻す

「私瑞穂見てるの辛いです…」
「…」
「忍さんの足の事全部自分の責任だって…だから椎名君と離れてる事も寂しいなんて思う権利無いって…本当は誰よりもそばに居たいくせに…!」
「…こいつは何も悪くないのにな。なのに全部瑞穂の肩にかかってくる…」
忍はそういいながら瑞穂のそばに座った

「俺も海莉も亡くなった両親も瑞穂に甘えすぎだよな」
「そんな…」
「年を追うごとに弱くなる心臓に反比例するみたいに心だけは強くなってさ、もっとも俺らがそうさせてるのかもしれないけど…」
忍は寂しそうに言う

「両親が事故で死んで瑞穂が倒れて俺が事故って…あの日から瑞穂が泣いたのを見てない」
「え?」
「泣かないのか泣けないのかは分かんねぇけど、少なくとも人前では涙を見せなくなった」
律子は色々思い返してみた
確かに以前の瑞穂は感情豊かで喜怒哀楽をストレートに表に出していた
でも忍の言うようにいつからか常に微笑んでいて自分自身そんな瑞穂に甘えていたようにさえ感じる

その時瑞穂の意識が戻る
「瑞穂」
「…お兄ちゃん?…そっか私また倒れたんだ」
瑞穂は自分の記憶を辿る様に遠い目をした

「海莉には?」
「言ってない」
「そう。よかった」
心からほっとしたように笑う瑞穂に二人は胸が締め付けられるような感覚を覚える

「また迷惑かけちゃったね」
「何言ってんのよ?迷惑だ何て思わないし瑞穂がこうして目を覚ましてくれたからそれで十分だよ」
「…ありがと」
「ばか」
律子はそう言って初めて笑顔を見せた

「海莉には本当に知らせなくていいのか?」
「うん。この日曜日試合で一番大事な時期だから余計な心配かけて心乱したくないし」
「…そか。わかった…次の試合見に行くか?」
「いいの?」
「あぁ。車出してやる。俺も久々にあいつのサッカーしてるトコ見たくなったしな」
律子はこのとき初めて忍の優しい笑顔を見た
それは他の人間には向けた事が無いであろう特別な笑顔のように思えた



「お前ら何やってる?!3日後試合があるの忘れたのか?」
グランドで監督の罵声が飛ぶ中海莉は走り回っていた
とても楽しいとは思っていられない状況である
それでも海莉の顔は生き生きしている

「監督どうですか?今年は」
「あぁ海莉なんかいいだろう。幻で終わった聖忍とどこかかぶるがな…」
「聖ですか…あれは惜しかったですねぇ」
「どういうヤツなんです?」
コーチ陣が話しに入ってくる

「両親の事故死にショックを受けて、発作を起した妹さんを見舞いに行く途中交通事故で足を駄目にした選手ですよ」
「彼は1年の時点で卒業後の進路が決まっていた」
「それはすごい…」
「その彼に海莉の動きはよく似てるんですよ。まるで真似ているかのように」
「でも真似だけじゃ限界があるんじゃないですか?」
「あれが限界に近いプレーですか?」
監督の言葉に皆が海莉を見た

切れのいい動きに格別のテクニック、そして何より遠くからコート内を見ているかのように周りの動きを把握したパス回し…
「…とても真似だけでは…」
「でしょう?忍もそうでした。あんな事故さえなければ…」
その言葉に皆が沈黙していた

その日のミーティングで海莉はスターティングメンバーに入ったことを知らされた
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