[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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10.居場所

6

「そういえば、レイと一緒に暮らし始めて1年半くらいだっけ?」
「うん。ちゃんと付き合いだしたのは1年くらい前だけど…」
「はたから見てたら最初から付き合ってるようにしか見えなかったけどね」
今日のナターシャさんはからかうのを楽しんでいるようだ

「最初からレイのサラサちゃんとの距離は近かったからね」
「距離?」
「物理的にも心理的にもかしら」
そう言われてもいまいち分からない

「私達、毎年レイの家に1か月ほど泊まりこんでるでしょう?」
「休息の時ですよね?」
尋ね返すとナターシャさんは頷いた

「あれだけ泊まり込んでても、私たちが2階に上がったことはないのよ?」
「え…?」
「普段はその必要もないけど…大けがして動けない時も高熱で寝込んでる時も、レイはカルムでさえ2階に上がることを拒んでたの。なのにサラサちゃんは最初から隣の部屋に入れてたんでしょう?」
確かにその通りだけど…

「でもそれは下の部屋が皆の専用の部屋になってたからじゃ…?」
「仕方なく関係ない人間を泊めるときは下の部屋だったわよ。専用の部屋って言ってもレイの家だし、私たちに文句言う権利も、文句言う気もないしね」
確かにその通りである

「レイにとって2階は完全なパーソナルスペースってことなんでしょうね。そこに最初から立ち入ることを許してたってことにレイ自身が気づいてるかはわからないけどね」
そう言いながら見せたナターシャさんの笑みは少し寂しそうだった

「そういうのもあって、いい加減ちゃんとすればいいのにって前から皆でけしかけてるんだけどどう?」
「え?けしかけるって…?」
突拍子もない問いかけに固まってしまう

「ナターシャさん?けしかけるって一体何を?」
「決まってるじゃない。プロポーズよ」
「!!」
当たり前のように言われて呆然とする

「今でも結婚してるって言われれば誰も疑いもしないくらいじゃない?」
「え…と?」
「大切にしたいならくらいちゃんとつけなさいってことよ。でもその様子じゃ何も無いか」
ナターシャさんは呆れたように言った

レイは皆からプロポーズしろって言われ続けてるということだろうか?
それは流石に居たたまれないんだけど…
この先もレイと一緒にと思ってはいても周りから言われてとか…流石に無い
でもレイが周りに言われたからといって行動するタイプじゃないとも思うと、自分でも訳が分からなくなってくる
とりあえずここは聞かなかったことにしよう

「そういえばサラサちゃんの田舎のプロポーズってどんな形だったの?」
「プロポーズ…」
私の田舎…いわゆる前世のプロポーズと言われると考えてしまう

「…言葉をそえてリングを贈る?」
決まった形はなかったのではないだろうかと思い疑問形になってしまう
ロマンチック、サプライズ、それ以外にも様々だった気はする
でも情熱的なもの、素っ気ないもの、愛情から来るもの、打算的なもの…何であれそこは共通してるのではないだろうか?

「リングなのね。じゃぁ返事はどうするの?」
「返事?…言葉で同意したことを伝えるくらいだと思うけど…」
むしろそれ以外に何があるというのか

「そっか…ちなみにねサラサちゃん」
「はい」
「この辺りでは男性からミスリルのブレスレットを贈るのよ」
そう言いながらナターシャさんは左腕にしているブレスレットを見せてくれる

「プロポーズを受ける場合はそのブレスレットに口づけてから相手に口づける」
「えー?!」
驚きでしかない
少なくとも今までに私からレイに口づけたことなど一度もないし簡単にできるとも思わない

「…もし断る場合は?」
ごまかすように問いかける
「その場合はブレスレットを相手に返す」
同意する時との落差が半端ない

「だから、ちゃんと覚えておいてね」
「…はい」
拒否は許さないという勢いに飲まれながらなんとかうなずいた

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