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46.魔物と遭遇
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しおりを挟む「サラサちゃんも休んで」
「ありがと。ナターシャさん」
ナターシャさんに促されてソファーに身を預ける
「シナイ」
『なに?』
シナイは私が差し出した手のひらに乗る
「魔物はシナイが倒したって?」
『うん。妖精は魔法も使えるからね』
「そっか…じゃぁバルドは魔物にびっくりして発作起こしたのね?」
『多分そう。ボクがサラサを呼びに来ようとしたんだけど一人になりたくないって』
「そっか。だから私を呼んでくれたのね?」
『聞こえた?』
「呼ばれた感じはしたの。確信が持てなかったけどシナイの声を聞いた妖精たちが知らせてくれたわ」
『それで来てくれたんだね。そうか。最初から呼んできてもらえばよかったんだ…でもそれよりも…』
シナイが何か一人で考えている
「えっとサラサちゃん?この光は一体?」
ナターシャさんが首をかしげながらこちらを見ていた
「あ、この子はバルドが契約してる妖精のシナイ。遭遇した魔物はシナイが倒してくれたみたい」
「契約?あの子いつの間に?」
「昨日の朝。シナイは竹の妖精でバルドが気に入ったんだって」
「そうだったの。バルドを助けてくれたなら感謝しないとね。ありがとう」
『どういたしまして。ナターシャに祝福を』
「「え?」」
『バルドの側にいるなら話せた方がいいしね』
「あら」
ナターシャさんが目をパチパチしながらシナイを見る
『サラサもボクと契約してくれない?』
「契約?」
『うん。バルドに何かあったとき契約してればすぐに呼べるかなって』
あくまでバルドのためらしい
「本当にバルドを大切にしてくれてるのね。そういうことなら喜んで」
私が頷くとシナイはさっそく契約をしてくれたようだ
「ママ、バルドお兄ちゃん起きた」
リアムが呼びに来たためみんなでバルドの部屋に向かう
「気分はどう?」
「大丈夫…」
身体を起こしたバルドはそう言いながらもうつむいている
そんなバルドをそっと抱きしめる
「サラサ姉ちゃん…」
「ん?」
「僕やっぱり…一人では何もできないのかな…」
どこか絶望を含む声だった
「馬鹿ねバルド」
「だって…」
私にしがみ付くバルドの手は震えていた
「僕何もできなかった。それにまた発作…」
「誰だって初めて魔物に遭遇したら普通じゃいられないわよ」
そう言ったのはナターシャさんだ
『ボクの力はバルドの力なのに…』
シナイがすねたように言う
「でもシナイがいなかったら僕は…」
「そのシナイに契約を言い出させたのはバルド自身よ?」
「それは分かってるけど…」
「自信持ちなさいバルド。今あなたがこうしていられるのはあなた自身のおかげよ?」
「僕自身?」
「そうよ。私たちにとってバルドが助けるに値する人物だってこと。それはバルド自身が今までに積み上げてきたもののおかげなんだよ?」
「考えても見なさい?嫌いな人を助けようとはしないでしょう?」
「…うん」
「よく頑張ったねバルド…無事に帰ってきてくれてよかった」
「サラサ姉ちゃ…」
バルドはそのまま泣き出してしまった
「ママ、バルドお兄ちゃん何で泣いてるの?」
「そうねぇ…安心したのかな」
「安心?」
「魔物に出会って怖かったのと発作を起こして不安だったのね。今はもう大丈夫でしょう?」
「「うん」」
「よかったねバルドお兄ちゃん」
「あとでまた遊んでね?」
マリクとリアムの無邪気な言葉はバルドにとって救いだったのかもしれない
しがみ付く手が少し緩んだ
「よし、体調が戻ったら魔物に慣れる練習しようか」
「魔物…慣れる?」
「この辺りは出てもスライムかフォレストドッグくらいだからね」
『ボク群れでも軽く倒せるよ』
シナイが笑いながら言う
「心強いわねシナイ」
「シナイがいればバルドは倒すまで行かなくても大丈夫そうだから見慣れてしまえば発作も起きないでしょう?」
「僕倒したい」
そう言ったのはマリクだ
「そういえばマリクの魔法の練習も進めようと思ってたからちょうどいいかもね」
「そっか。マリクが練習してるのを見てれば慣れるかな?」
「…僕も何かできる?」
守られてるだけでは嫌なのだとその目が言っていた
「バルドも水魔法練習する?魔法なら離れた場所からでも攻撃できるし」
「ん」
『ボクがいるのに…』
「あ…」
すねるシナイにバルドが戸惑っている
「シナイを頼りにしてないわけじゃないのよ?ただシナイがバルドを守ってくれるように、バルドもシナイを守りたいって思ってるだけだと思うよ?」
『…それならいいや。バルドと一緒に戦うのも楽しそうだし』
シナイはそう言ってバルドの手の上に座ると嬉しそうに笑った
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