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前世からの約束
第5話 記憶
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「一体何だったんだ?」
現実味のないことが目の前で起こった
でもその痕跡が一切ない
「夢じゃないよな…?」
そう思ってしまうくらい4人にとってありえない事態だ
「ねぇ、あの人たち、自分の意志に反して落ちてったんだよね?」
「ああ。多分…」
実津杞にそう答えながらもやはり確信が持てない
「私たちは何で無事なんだろ?」
素朴な疑問だった
同じように島に入り大木の前までやってきた
でも彼らと自分たちは同じ場所にいながら別の場所にいるように感じたのだ
まるで芝居でも見ているような感じだろうか
『そなたたちは特別だ』
突然大木の声が響いた
『我に触れよ。さすれば記憶が戻るだろう』
4人は思わず顔を見合わせる
何も言葉は発しない
でも見えない何かに導かれるように4人は大木の側に立った
そして同時にその幹に触れた
◇ ◇ ◇
自然に恵まれた村が目の前に広がっていた
「沙竝そっちはダメだよ?」
村に向かって足を進めようとした途端引き戻される
「お母さんに会いたいよ」
「会ってくれないって」
それでも村に行きたがる沙竝を何とか引き留める
「魅月だっていつも会いたいって言ってるじゃない。麗衣も綴毅も本当は戻りたいんでしょう?」
沙竝の言葉に3人は無言のままうつむいた
「戻りたい…でも行けば後悔すること、沙竝だって分かってるだろ?」
麗衣の言葉に沙竝は泣き出した
まだ幼い4人は村からつまはじきにされていた
両親が、家族がいるのに自分たちの居場所はない
見かけただけで殴り掛かられたり石をぶつけられたりする
物心つく前から4人は村人たちからずっとそうされてきたのだ
「決めただろ?4人で生き延びるって。もう誰も頼らないって」
綴毅が言う
「もうあの人たちに傷つけられるのも、傷つけられた3人を見るのも嫌だよ」
「魅月…ごめん…」
沙竝は魅月に抱き着いた
「俺達にはこの森がある。植物も動物も仲間だ。森の中が俺達の居場所だ」
麗衣がそう言った途端森の木々が揺れた
そして4人の周りに動物たちが集まってくる
「森の木や動物たちが家族だよって言ってくれてる。」
魅月は動物たちをなでながらそう言った
自然や動物の声を聞く力
それは魅月が生まれながらに持っていた力だ
苦しんでいる家畜の声を代弁し村の長からの怒りを買った
害虫を退治してくれという農作物からの願いを伝えても聞き入れられず、害虫による被害を受けた時から気味悪がられるようになった
長の怒りを買った気味悪い娘を両親も兄、姉たちも敵視するようになった
家に居場所はなくいつも追い出されるようになり、ご飯もろくにもらえなかった
そんな魅月を受け入れてくれたのが森であり、助けてくれたのが森の動物たちだった
「木が雨や風をしのぐ場所を与えてくれる。動物たちが食べるものを教えてくれる。みんながいればそれで充分だよ」
「あいつらは自分の事しか考えない。俺はこの力を森のために使うって決めたんだ。もう二度と森を、動物を攻撃するためになんか使わない。俺を金づるとしか思ってなかった家族のためにやりたくもないことをするのはもう嫌だ」
「麗衣…」
悔しさに涙をこぼした麗衣に動物たちがすり寄っている
麗衣は攻撃の力を持っていた
その力を長は自分の思うままに使わせようとした
麗衣に対して家族を守りたければ言うとおりにしろと脅され、森を焼いたり動物を殺したりという自分では絶対にしたくないことをさせられていた
少しずつ心が壊れていく中寄り添ってくれたのが沙竝だった
沙竝は人の心が読める力を持っていたため、その頃には既に村中から気味悪がられていた
でもその力のおかげで麗衣が苦しんでいることに気付き、もう嫌だと本心を吐き出すことで麗衣は何とか狂わずに済んでいた
そんな麗衣が4歳になった時、長と麗衣の家族がグルだと知った
あんな力を持った息子は金のために利用する以外に価値は無い
それが実の母親の言葉だった
ショックから力を暴走させた麗衣を沙竝はその身をもって庇い、守りの力を持った綴毅がその傷を癒した
その綴毅自身も麗衣と同じように家族を盾に長のために力を使わされていた
でも長の娘が崖から落ちた時、すでに事切れていたにもかかわらず治癒できなかったとしてつまはじきにされた
家族は自分たちがつまはじきにされることを恐れまだ3歳の綴毅を切り捨てていた
そんな事情を全て魅月が森達に説明し、4人は森に受け入れられたのだ
「あれから2年だよね…」
「もうそんなに経つんだな」
魅月の言葉に綴毅は森を見上げた
「どうして帰りたいなんて思ったんだろ…」
沙竝はつぶやくように言う
「帰る場所なんてないってわかってるのに…」
その言葉は虚しく響いた
◇ ◇ ◇
「…そうだ…俺は…俺たちはこの島にいた…」
玲衣の言葉に4人は同じように大木を見上げていた
現実味のないことが目の前で起こった
でもその痕跡が一切ない
「夢じゃないよな…?」
そう思ってしまうくらい4人にとってありえない事態だ
「ねぇ、あの人たち、自分の意志に反して落ちてったんだよね?」
「ああ。多分…」
実津杞にそう答えながらもやはり確信が持てない
「私たちは何で無事なんだろ?」
素朴な疑問だった
同じように島に入り大木の前までやってきた
でも彼らと自分たちは同じ場所にいながら別の場所にいるように感じたのだ
まるで芝居でも見ているような感じだろうか
『そなたたちは特別だ』
突然大木の声が響いた
『我に触れよ。さすれば記憶が戻るだろう』
4人は思わず顔を見合わせる
何も言葉は発しない
でも見えない何かに導かれるように4人は大木の側に立った
そして同時にその幹に触れた
◇ ◇ ◇
自然に恵まれた村が目の前に広がっていた
「沙竝そっちはダメだよ?」
村に向かって足を進めようとした途端引き戻される
「お母さんに会いたいよ」
「会ってくれないって」
それでも村に行きたがる沙竝を何とか引き留める
「魅月だっていつも会いたいって言ってるじゃない。麗衣も綴毅も本当は戻りたいんでしょう?」
沙竝の言葉に3人は無言のままうつむいた
「戻りたい…でも行けば後悔すること、沙竝だって分かってるだろ?」
麗衣の言葉に沙竝は泣き出した
まだ幼い4人は村からつまはじきにされていた
両親が、家族がいるのに自分たちの居場所はない
見かけただけで殴り掛かられたり石をぶつけられたりする
物心つく前から4人は村人たちからずっとそうされてきたのだ
「決めただろ?4人で生き延びるって。もう誰も頼らないって」
綴毅が言う
「もうあの人たちに傷つけられるのも、傷つけられた3人を見るのも嫌だよ」
「魅月…ごめん…」
沙竝は魅月に抱き着いた
「俺達にはこの森がある。植物も動物も仲間だ。森の中が俺達の居場所だ」
麗衣がそう言った途端森の木々が揺れた
そして4人の周りに動物たちが集まってくる
「森の木や動物たちが家族だよって言ってくれてる。」
魅月は動物たちをなでながらそう言った
自然や動物の声を聞く力
それは魅月が生まれながらに持っていた力だ
苦しんでいる家畜の声を代弁し村の長からの怒りを買った
害虫を退治してくれという農作物からの願いを伝えても聞き入れられず、害虫による被害を受けた時から気味悪がられるようになった
長の怒りを買った気味悪い娘を両親も兄、姉たちも敵視するようになった
家に居場所はなくいつも追い出されるようになり、ご飯もろくにもらえなかった
そんな魅月を受け入れてくれたのが森であり、助けてくれたのが森の動物たちだった
「木が雨や風をしのぐ場所を与えてくれる。動物たちが食べるものを教えてくれる。みんながいればそれで充分だよ」
「あいつらは自分の事しか考えない。俺はこの力を森のために使うって決めたんだ。もう二度と森を、動物を攻撃するためになんか使わない。俺を金づるとしか思ってなかった家族のためにやりたくもないことをするのはもう嫌だ」
「麗衣…」
悔しさに涙をこぼした麗衣に動物たちがすり寄っている
麗衣は攻撃の力を持っていた
その力を長は自分の思うままに使わせようとした
麗衣に対して家族を守りたければ言うとおりにしろと脅され、森を焼いたり動物を殺したりという自分では絶対にしたくないことをさせられていた
少しずつ心が壊れていく中寄り添ってくれたのが沙竝だった
沙竝は人の心が読める力を持っていたため、その頃には既に村中から気味悪がられていた
でもその力のおかげで麗衣が苦しんでいることに気付き、もう嫌だと本心を吐き出すことで麗衣は何とか狂わずに済んでいた
そんな麗衣が4歳になった時、長と麗衣の家族がグルだと知った
あんな力を持った息子は金のために利用する以外に価値は無い
それが実の母親の言葉だった
ショックから力を暴走させた麗衣を沙竝はその身をもって庇い、守りの力を持った綴毅がその傷を癒した
その綴毅自身も麗衣と同じように家族を盾に長のために力を使わされていた
でも長の娘が崖から落ちた時、すでに事切れていたにもかかわらず治癒できなかったとしてつまはじきにされた
家族は自分たちがつまはじきにされることを恐れまだ3歳の綴毅を切り捨てていた
そんな事情を全て魅月が森達に説明し、4人は森に受け入れられたのだ
「あれから2年だよね…」
「もうそんなに経つんだな」
魅月の言葉に綴毅は森を見上げた
「どうして帰りたいなんて思ったんだろ…」
沙竝はつぶやくように言う
「帰る場所なんてないってわかってるのに…」
その言葉は虚しく響いた
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