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次の日志帆は昼前に琉稀の部屋へ向かった
ドアの前で髪を整え服装をチェックする
大きな深呼吸をしてからインターホンを押した

「はい・・・」
ドアが開いて眠たそうな琉稀が顔を出す
「志帆・・・」
予想外の客に琉稀は驚いた顔をする
眠たそうだった目が一気に見開かれていた

「話たい事が・・・」
「ん。ちょっと待ってろ」
琉稀は中へ戻ったかと思うとすぐに出てきた

「昼飯は?」
「まだ」
「んじゃどっか行くか」
琉稀はそのまま駐車場に向かう

車に乗り込みしばらく走る
無言のままどちらからも話を振ることはない
ふと見ると助手席の志帆の膝の上に置かれた手は強く握りしめられていた
「・・・」
琉稀は何も言わずその手を包み込む

「え・・・?」
「そんなに握りしめてたら爪が食い込むぞ」
そう言われて初めて自分の手を見た
少し血色が悪くなっている
何も言わないまま手の力を緩めると琉稀がホッとしたように笑った

琉稀は手を放すと海岸沿いのレストランで車を止めた

「・・・で?」
通された席でオーダーをしてから琉稀は志帆を見た

「・・・どうして瑞穂さんの事彼女だって言ったの?」
「え・・・?」
思いもよらない質問に戸惑う

「付き合ってなかったって聞いたの。瑞穂さんもうすぐ結婚するって」
「・・・」
琉稀はバツが悪そうに視線を外に向ける

「やっぱり琉稀さん不器用・・・」
志帆がかすかに笑う
「悪かったな。結局何が言いたい?」
少しムッとして琉稀がたずねた

「私・・・そんな琉稀さんが好き」
志帆は琉稀の目を見てきっぱり言った

「・・・え?」

「私、琉稀さんのそばにいてもいい?」
「志帆・・・」
琉稀の表情が一瞬こわばり、次の瞬間優しい笑顔に変わる

「本当にそれでいいのか?」
琉稀の問いに大きく頷く

「後から取り消しなんてなしだぞ?」
「そんな事しない」
とっさに答えた志帆に琉稀は微笑んだ

「俺も志帆が好きだよ」
志帆の目から涙がこぼれた

「ごめ・・・」
「いいよ」
琉稀は志帆の頭をなでた
「我慢しなくていい」
「琉稀さん・・・」
優しい笑顔に包まれて少しの間志帆は泣いた
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