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第1話・みぃちゃん
1-06・誘拐にはならない
しおりを挟む「失礼ね。攫ってきてなんかいないわよ」
ヨウコは口を尖らせる。
少女は何処か不安そうな顔のまま、小さな手できゅっとヨウコの服を握り締め、ただ静かに、一言も口を開かなかった。
(大人しいな……)
人見知りなだけかもしれないが、子供特有の闊達さが、その様子からは見られなくて、玄夜は少しだけ不思議に思った。
とは言え、もともと玄夜は小さな子供となどそこまで接触する機会を持たないので、こんなものなのかもしれないけれど。
玄夜の意識が少女に向いていることを確かめるようにヨウコもまた、少女をちらと見て口を開く。
「それに誘拐になんてならないもの」
わからない?
言わんばかりの視線に、玄夜はようやく理解する。
注意深く、少女を改めて確認して、
「……ああ、なるほど。確かに」
これでは誘拐になどならないだろうと頷いた。
「でも、だからと言ってどうするんですか? 見る限り、だったら余計にまずそうですけど」
むしろ心配事は増したとさえ続けた玄夜に、ヨウコは小さく肩を竦めた。
勿論、少女を抱えたままで、だ。
「わかってるけど……でもしょうがないじゃない。放ってもおけないし」
私だって、好きで連れてきたわけじゃない。
その口調は、いっそ少女を連れて来たくなかったとまで言いたげだ。
そんなヨウコの言葉のニュアンスが伝わったのか、少女がびくりと肩を揺らして、くしゃと顔を歪め始める。
泣くのだろうか。
ぎゅっと罪悪感を刺激され、玄夜は慌てた。
「ちょっと、ヨウコさんっ!」
本人を前になんてことをっ。
玄夜の僅か上擦った声にヨウコは溜め息を吐いて、とりあえずと言わんばかりに身をかがめ、少女を床に下ろす。
今にも泣きそうな顔で、だけどヨウコからは離れない少女に、ヨウコはそっと促した。
「悪かったわよ。君もごめんね? ほら、気を取り直して、まずは座ろ」
立ったままじゃ落ち着かない。
小さな謝罪と共にそう促すと、少女はおずおずと頷きながら、ヨウコに導かれ、机に近寄って座り、躊躇いながらこたつ布団に足を入れた。
不安そうに揺れる少女の眼差しを無視できないのだろうヨウコが少女を後ろから囲むように体を寄せてやはりこたつに潜り込む。
そのまま多分、膝の上に乗せたのだろう様子を見ながら玄夜は、
「ところで……その子、そば食べますかね?」
なんて、夕食の心配をしたのだった。
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