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第2話・過去と今
2-06・目に留まった1冊
しおりを挟むそんなやり取りを、エツコはまったく口を挟めず、気まずげに見ているだけしか出来ないでいる。
ヨウコもみぃちゃんも、エツコに何か配慮するつもりなどは一切ないらしい。
なんだかかわいそうになってきた玄夜は溜め息を吐いて立ち上がった。
そもそも、エツコに、上がっていくかと誘いかけたのは玄夜なのだ。
まさかこのまま放っておくわけにもいかない。
「エッちゃん、さっき言った本、持ってくるね」
みぃちゃんの依頼に関して記された本である。
エツコはどこかほっとした様子で玄夜を振り仰いだ。
「あ、私も行きます」
「そう? じゃあ、一緒に行こうか」
ここに残されて待つのも抵抗を感じたのだろう、思わずと言った風に立ち上がりかけたエツコの申し出を止めず、逆に玄夜も誘いかけた。
ヨウコは勿論どうでも良さそうな顔をしているし、みぃちゃんはみぃちゃんで、どこか疲れているように見える。
それでいて彼女はヨウコの膝からはおりておらず、なんだかなぁと思いながら玄夜はエツコを伴って書店へと降りていった。
書店部分は狭い。
棚もそれほど多くはないが、それでも全部の壁一面と、真ん中に天井近くまで届きそうな棚が二列あった。
そんな店内で、みぃちゃんの依頼について記された本は奥にある。
当然、仕舞ったのは玄夜なので、迷いなくそこへ向かった。
二人、連れ立つにはやはり通路はどうにも狭い。
人が避け合わずにすれ違えるほどには、広くはないのだ。
だからかエツコは玄夜の後ろ、半歩離れて着いてくる。
と言っても、歩数にしてほんの数歩。
すぐに辿り着いた奥まった一角、まだ少し空きのある、一番新しい書物を置いてある棚から、一番端のそれを抜き出してエツコに差し出した。
「はい、これ。さっきの、みぃちゃんからのことが載ってる本だよ」
頷きながら受け取ったエツコが、その場で立ったままパラパラと本をめくりはじめるのを見て、この分なら多分、すぐに確認できるのだろうなと玄夜は思った。
少し迷ったが、もう一度住居部に戻るのも、またエツコが気まずい思いをしそうでそのまま待つことにする。
時間がかかるようならば適当な所で声をかけて、貸し出してもいいかもしれないなんて思いながら、なんとなく手持無沙汰で周囲の棚を見回した。
ふと、目についたのは、今、本を抜き取ったのと向かい側に位置する棚にある1冊の本。
……――それは他でもない、エツコの関係する依頼について、まとめられた本だった。
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