13 / 31
第2章
2-12・彼と過ごす、日常⑫(ルーシー視点)
しおりを挟む俺はとても複雑な気分で、だけどそれを少したりとも表に出さないように気を付けて二人を見続けた。
和やかな空気を壊さないように苦心する。
その実内心で大変に緊張しながら。
それは決してアーディさんと、今日が初対面だからという理由だけではない。
もしアーディさんがただの冒険者であったなら、これほどまでに緊張することなどなかっただろう。
そして俺がこんなにも緊張していることを、きっとアーディさんには見抜かれているのだろうなとそう思った。理由も含めて。
同時にきっとティーシャは何も知らないのだろう、そうも思う。
ああ、ティーシャ。
馬車の中は終始和やかに、そして想定通りの時間で魔の森へと着いたらしい。
ぴたり、馬車が止まったのは昼を少し過ぎた頃のことだった。
「ああ、着いたみたいだね、降りようか」
そう告げて促したのはアーディさん。
「もう少しすぎてしまったけど、君たち、お昼は何か用意している?」
昼食を摂っていなかったことを気にして、声をかけて下さったアーディさんに、ティーシャとなんとはなく顔を見合わせた。
いつも二人の時には、携帯食料などで適当に済ませている。
特にこうして討伐に来ている時はなおさらだ。
だから今日も同じように考えていたのだけれど。
「俺たちはいつも携帯食料で済ませてしまうんですけど、お二人はどうなさるんですか?」
そう訊ねたのは俺だった。
場所は魔の森の入り口付近。
まだこの辺りなら魔獣が出ることはほとんどない。だけど馬車は近くに置いて行くことになるだろう。
魔の森を通り抜けるような場合ならともかく、今回のような討伐の場合、馬車ごと進むことはまずない。否、目的としている場所にもよるのだけれど、今回はそこまで深くまでも入らない予定だ。
それでも数時間は歩くことになる。
昼食を摂るなら今のタイミングとなるのは何もおかしくはなく、そして携帯食料だった場合は、歩きながらでも摂取は可能だった。
そういった諸々も踏まえての問い。
同じ冒険者なのだから、携帯食料と告げた時点で、普段の俺達がどうしているのかは伝わっているはず。
案の定アーディさんは、全てをわかっていそうな表情で小さく頷いている。
「うん、そうだね、僕達も普段は携帯食料で済ませることが多いかなぁ……でも今日は君たちがいるから……実はね、ちょっと用意してきた物があるんだ。だから良ければこの辺りで少し止まって昼食を摂ってしまおう。知っている? 近くに沢もあるんだけど……そうだなぁ、ちょっとそこで水を汲んで来たいと思うから、二人のうちどちらか……ルーシーくんだっけ? 一緒に来てくれるかい? その間にティーシャくんはソーマと準備をしておいてくれると助かるんだけど。どういう準備かだとかはソーマがわかっているからね」
そう告げるアーディさんに、俺もティーシャも異論などあるはずがなかった。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる