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11・寵愛
しおりを挟む今日はまだ、こうして部屋に戻って来れているので良い方なのだ。
なにぶん陛下は、本当に私を離さない。
私は陛下が好きだ。その気持ちがなくなったわけではない。ただ、前世の感覚が強い今の私は、そんな陛下の寵愛を、これまでと同じように受け入れられるとは到底思えなかった。
だって恥ずかしすぎる。無理だ。
さっきもぎりぎりだった。
陛下は顔がいい。それはもうかっこいい。
改めて考えると、今世での私だって、全然悪くないと思う。
艶やかな水色の髪は少し癖はあるものの豊かに煌めいて、澄んだ瞳は黒に近い紫だ。
ぱっちりと大きな目をした、幼い顔立ちの美少女。いや、年齢は少女というほど幼くはないのだけれど。だって20歳は超えているし。
そうだ、年齢! も、多分、陛下の暴走の理由だろうと思う。
私と陛下の婚約は、私たちが子供の時に結ばれた。確か私が五歳の時。
私より三つ上の陛下は、その当時からそれはもうお優しくて、思い出すだけで顔が赤くなる。
私の小さな王子様。
陛下の私に対する寵愛は、子供の時からあからさまだった。
それもあり、成人後すぐだと思われていた私の輿入れは、しかし結局、色々な事情で延びに延びて、ついには半年後と決まったけれど、きっと陛下は待ちきれなかったのだろうと思う。
陛下が私へと手を伸ばしたのは、私が一足早く王宮で過ごすようになったまさにその日で、だから……――いや、だからではない。
せっかくここまで待ったのだ、あと1年もなかったのだそれぐらい待ってほしかった。
しかも、一度手を出すと歯止めが利かなくなったのか、際限がなくなって。
この後、陛下には休憩時間を見計らってまた訪れると言ってしまったけれど、それが今から恐ろしくてならなかった。
さっきはアリムエ執政官のおかげもあって事なきを得たけれど、きっと次はそうもいかない。
と、言うか、今までの私なら受け入れていたのだ。今更と言えば今更で、やはり陛下には私が前世を思い出したことは伝えなければならないと決心を新たにする。
それでなんとか、現状の過ぎるほどの寵愛を、少しばかり自重してもらうのだ。
だけど。
陛下と自分の最近の姿を思い返して、正直そう上手く行くとは思えなくて、私は落ち込むばかりだった。
「フィア様」
リダが気の毒そうに声をかけてくれる。
「リダ……」
私は力ない笑顔を彼女に向けた。
今の私の感覚を理解してくれる人がいる。否、多分陛下以外なら皆、きっと理解してくれる。
それだけが今の私の慰めだった。
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