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8・結論
しおりを挟むしかしホセがはっきりそう拒絶しても、ネアは一切引く様子を見せない。
「それこそ、一刻も早くここから移動するべきでしょう。こちらは辺境の小さな集落です。このような場所ではいろいろと不足しすぎて、御子を産み落とすことなど出来るとは思えない」
身重だからこそなのだと、ネアは重ねて告げてきた。
なんとはなく、周囲を見回す。
確かに此処は小さな集落なのだ。
いくら僕が今身を寄せている、ホセの住まいが診療所であるとは言え、何か特別な設備があるわけでもない。
準備が色々と足りていないことは間違いがなかった。
それでも。
陽射しが肌を焼く。
眩しい。
砂漠ではこの陽射しがもっと強い。
それを僕はすでに知っていた。
とてもあの砂漠を超えられるようには思えないが、しかしこの様子ではきっと僕の意見など何も通らず、それどころか聞かれることもなく、僕のこれからが決まってしまうのかもしれない。
ネアが慇懃に言い募る。
「私がお連れ致します。幸い私はティリチュアの民。きっとお役に立ちましょう」
その大きな体が、何か助けになるとでも言うのだろうか。
僕には全く予想もつかなかったけれど、ホセの頑なな態度は、それで少し緩和されたようだった。
それはネアが大領主様とやらの近衛で信用に足るというのもあるのかもしれない。
それともネアがネアだからこそなのか。
辺りには番の、とてもいい匂いが満ちている。
この匂いを嗅いでいるだけで、まるで心配事など、全てどうでもよくなってしまうかのようだった。
ホセは物凄く考えていた。
考えて考えて、やがて小さく首肯する。
ホセは僕に、意見など訊ねようとはしなかった。
「……わかった。それほどまでに言うのなら、俺も共に行こう。ここではいろいろ不足しているのは間違いないし、しかしデュニナの今の状態を、一番わかっているのはきっと俺で、一番に支えられるのもきっと俺だ」
ホセの言葉で、僕はどうやらホセと共に、ネアに連れられ、砂漠を渡ることとなるのだと理解する。
辺りは騒然としていた。
しかし決して引き留めるような気配はない。
それも当たり前のことなのだろう、何せ僕はただ数日前から、ホセの診療所に身を寄せているだけのものにすぎないのだから。
神人。
それがいったい何だというのか。
誰からの説明もないまま、俺はそのまま早急にホセの診療所まで戻って、荷物をまとめることになったのだった。
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