16 / 49
14・増えた子供と
しおりを挟む流石にもう一度なんて求められることはなく、ようやく落ち着いて、ぐったりとしたまま俺はグローディが甲斐甲斐しく身支度を整えてくれるのに任せた。
着せかけられた服はやはり見慣れない形をしている。
まるで中世ヨーロッパの貴族のような、装飾過多なドレスシャツなど、女性でも着ないのではないかと思った。
履かせられた下着は、辛うじて見覚えのあるボクサータイプで少しほっとする。
紺色のトラウザーズにも目立った装飾はなく、しかし、お腹が大きいのを考慮してか、細身でありながらウエスト部分にはゆとりがあり、しっかりと着付けても苦しさは感じられなかった。
そう言えば先ほどの青年も似た印象の服を着ていたように思う。昨日一緒にいた子供達も、グローディも。
女の子たちは、ドレスのようなワンピース姿だった。
どれもこれも、あまり目にしない形のものばかり。
自然難しい顔になった俺に、気付いていながらグローディは何も言わず、服装を整えてからは、彼に支えられながら部屋を出た。
長い廊下を進んで、どうやら昨夜、気付いた時にいた部屋とはまた違う部屋を目指しているらしい。
辿り着いたのはガラス張りの広いサンルームのような場所で、子供達と先程の青年が思い思いに寛いでいる。
否、昨日いなかった子供が一人増えている?
2歳ぐらいだろうか。昨夜俺の膝の上にいた、一番小さい子供よりほんの少しだけ大きく見えた。ちょうど、その次に小さい子との間ぐらい。
「お待たせしました。ああ、テュリーも連れてきていたんですね」
「置いてはいけなかったんだよ」
グローディが青年に声をかけた。テュリーはあの増えた小さい子供の名前のようだ。
件の子供は、俺とグローディが部屋に入ってくるのを見たせいか、慌てたように青年に走り寄っていた。
ひしとしがみついている。
青年はその子供を抱き寄せて膝に乗せた。
年少の二人が俺に気付いてか、それともグローディにか、こちらに来ようとしたところを年長の子供たちに止められている。
「お会いするのは去年以来でしょうか」
「そうだね、揃って挨拶に来てくれた時以来だと思うけど」
グローディが俺の側から離れて、青年の側で跪いた。
視線は青年の膝の上に乗せられてなお、しがみついたままの子供。
「お久しぶりです、スィーテュリエ殿下。私はグローディジェと申します」
臣下の礼だった。
青年が溜め息を吐く。子供を促すと子供はおずおずと顔を上げて、
「グローディ……にいたま?」
なんとか聞き取れる程度の小さな声で呟いた。
グローディがにっこりと微笑む。
「ええ、それで構いませんよ」
わけがわからない。にいたま? 兄様か。つまり兄。兄?
「レシア様」
「あ、ああ、」
名を呼ばれて思考が途切れた。招かれるまま、歩み寄る。
どうするのがいいのかさっぱりわからないなりに、グローディの横辺りで身を屈め、両膝をついた。
大きなお腹が邪魔で、跪くのは難しそうだったので。
だが、そこまでして、この後どうすればいいのか。俺も倣って名乗るべきなのか。
だがなんと?
俺の名前は何と言っていたか。確か、レミュシアとか何とか。
そもそも、この美しい青年のことさえ俺は知らない。
この子供を殿下と呼んでいた。殿下ということは、この子供は王族だとかそいう立場にあるということだろうか。では、青年は? それに、グローディを、兄と?
「こちらはレミュシア。私の伴侶です。私も一緒に去年一度お会いしているのですが、覚えてらっしゃらないですよね」
グローディの言葉に、子供が頷く。去年ならばきっとこの子供はほんの赤子のようなものだったことだろう。ならば、覚えていなくとも仕方がない。
「どうぞ、これからよろしくお願い致します」
礼儀正しく、努めて柔らかく語りかけるグローディに、子供は徐々に警戒を解いていっているようだった。
俺はわけが分からないまま、それを間近で見ているしかなく。
「あ~~……さっきは急に悪かったよ」
そんなばつの悪そうな青年の言葉に、ようやくそちらへと顔を向けた。
これほどの近くで見ると圧倒される。改めて見ても、銀の髪と透き通った水色の瞳が眩しい、輝かんばかりの美貌の青年だった。
41
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる