【完結】気づいたら6人の子持ちで旦那がいました。え、今7人目がお腹にいる?なにそれ聞いてません!

愛早さくら

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44・微笑みのありか

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 そもそもこの世界での出産・・は、本来ならあれほどの痛みも違和感も覚えないものらしい。

「勿論、何も感じないというわけではないけどね。そもそも母親の体内にある限り子供は魔力の塊で実態を持たない。肉を割いて出てくるのでもあるまいし、痛みなど感じるはずがないんだ。苦しさもね。熱かったというのは魔力を感じていたのだろう。でも、それだっていつも通り・・・・・だったはずだよ」

 相談に乗ってくれたティアリィさんに言われて頷く。
 そうなのだ、思い返すとあれほど燃えそうだと思った熱さは、毎晩毎朝グローディに注がれていた熱さだったのだ。つまり、魔力を感知した際の熱。それが堪えきれないほど苦しいとなれば、もとより子供など作れない。
 だから出産の際も、それが原因で苦しむことはまずないのだとか。
 体内から魔力を取り出すのも、直接皮膚に触れていればよく、あの時も、俺はわかっていなかったけれど、腹部の辺りは服を寛げられていたらしい。
 で、俺の腹部の辺りに凝った魔力の塊を、肉体を生成しながら取り出そうとしていた、と。
 子供は充分に育つと母体から抜け出ようとする。その気配を感知した母親は父親を呼び、肉体を抜け出ようとする魔力を集め、生成しながら取り出してもらう。
 そこに痛みは伴わないが、魔力が抜け出る感触自体はあり、その所為で、魔力操作に支障が生じ、母親一人で自分で取り出すのは出来なくはないが難しいとのこと、場合によっては肉体が上手く生成できず、人に成れずに霧散することもあるというのだから恐ろしい。
 グローディが間に合ってよかったと心底思った。
 なお、父親以外でも子供の生成は出来るのだが、子供の生成には魔力を使用するため、どうしても子供は取り上げた人物の影響を免れず、取り上げた人物もまた、親のような存在となってしまうのだそうだ。
 だからよほどの事情がない限り、父親が子供を取り上げるのが一般的なのだと教えてくれた。
 母親の方も子供が上手く体内から出ていけるよう魔力操作が必要で、今回苦しんだ理由の一つに、俺にそれが出来ていなかったのもあるのではないかと言われた。
 次に子供を産むまで・・・・・・・・・に少し魔力操作に慣れた方が良いだろうと。……――俺が今後も子供を産む前提の提案だが、否定できる要素は何処にもなかった。
 実際、前回同じように記憶を失った時も、馴染むまでの期間も、それまでと同じように幾人かの子供を産んでいる。今後がそうではないとは言い切れない。と、言うか、多分、やはり同じようになるのだろうと思う。
 だって俺はどうしてもレシアにこだわってしまうし、レシアがそうしていたのなら、同じようにしなければいけないと、どうにも思ってしまうから。
 今までと同じように、子供が1歳になった直後、次にグローディと体を重ねた時に。俺は子供を望んでしまうのだろうと予想できた。
 子供はだいたい1歳までは両親の魔力を糧に育つので、次に子供を作るとしても、最低限1年は開けるのが一般的なのだそうだ。
 だからグローディとレシアの子供たちは、皆、ちょうど1年10か月ずつ年が離れているとのこと。
 子供を母親の体内で留めておける限界がおおよそ10か月だとか。

「レシア様は存外と几帳面でらっしゃいますから」

 そう、グローディに微笑みながら言われて、どう返せと言うのだろうか。
 子供も、グローディが望んでいるというよりは、レシアの固定観念により作られ続けているとのこと、レシアの素直さと応用や融通の利かなさの結果なのだそうだ。
 それで子供が増え続けているのだというから何とも言えない。俺自身がきっと今後同じ行動を取るだろうからなおさらだ。
 とにかく、出産には魔力が必要なので、魔力欠乏による体調の悪化はあり得ても、痛みや衝撃、違和感などはないものなのだが、反面、転生者にはままあることらしく、特に俺のように、急に前世の感覚を蘇らせたものにはより多く見られる傾向とのこと。正しい知識を得、魔力操作に慣れさえすれば、今回のような痛みや違和感は覚えなくなるるだろうと慰められた。
 俺としても痛かったり苦しかったりすることは全くちっとも好まないので、そうでないというのなら安心だ。
 俺の覚えている罪悪感についても、

「馴染むまで気長に付き合っていくしかないね。君は元のレシア君と自分のことを切り離して考えているようだけれど、正しくそれは同一の存在なんだよ。元のレシア君も君自身だ。他の誰かでなんてない。思い出した記憶の中にレシア君の感情が見えないと言うけれど、俺の予測では、当時のレシア君には該当するような感情自体がなかった・・・・・・・・んじゃないかな? 何も思っていなかった・・・・・・・・・・から、記憶の中にも何もないんだよ」

 などと、ティアリィさんに言われたのだが、そんなことはあり得るのだろうか。思い出せるような感情が、そもそもなかっただなんて。いかにレシアの言動が、少々どころではなく理解し難い物ばかりだったとしても、流石にそこまでとは思えない。
 ただ、納得できるような記憶もいくつか存在した。
 いずれにせよ、今の俺に出来ることは何もなく、日々、俺は俺として生きていくのみ。
 ある程度状況が落ち着いた頃にシェスも職場に復帰してしまって、元よりティアリィさんは頻繁に訪れてくれていたわけではない。何かあれば気軽に呼んでくれていいとは言ってくれているけれど、グローディには、あまり呼び出しすぎるのはお勧めしないと言われてしまった。
 ティアリィさんのパートナーでグローディの父親に当たる人が、あまりそういうことを好ましく思わない方なのだそうだ。
 グローディに似ているということなので容易に想像できてしまって、深く納得してしまった。

「どういう意味ですか?」

 なんて、圧のある笑顔でにっこり笑われたのだが、自分の行動を振り返ってみて欲しい。
 短い付き合いでもわかるぐらい、はっきり言ってグローディは独占欲の塊である。
 レシアが拒否しないのをいいことに、子供達にでさえ、レシアが構うのにいい顔をしていなかったというのだからよっぽどだろう。
 シェスがつくづく感心していたほどだ。
 子育ての手助けをしてくれている使用人たちに聞いても皆、首肯してくれた。
 同じ空間にいる限り、際限なくずっとべたべたと俺に触れていたがって、子供に魔力を与えるのさえ、最低限というありさま。
 日中はそういった行為になだれ込んだりしない、とは言ってもそういう問題ではない。
 そうして俺は、使用人の手を借りながら慣れない子育てとグローディの相手に忙しく、しかしゆったりと日々を過ごしていった。
 そもそも、グローディを気の毒に思うこと自体が間違いだったのだと俺はいい加減に気付くことになる。
 そんな感情を抱くこと自体ばかばかしい。
 多分この男は、レシアなら何でもいい・・・・・・・・・・タイプの人間だ。中身が元のレシア・・・・・だろうとだろうと。グローディにとってはきっと関係がない・・・・・
 とはいえ、罪悪感はいまだにある。
 それはきっと、馴染みきるまで、付きまとい続けるのだろうと思う。だけど。

「レシア様」

 グローディがそうやって、変わらずに愛しいという眼差しを俺に注ぐので。俺は小さく微笑み、それを受け入れていくのみなのだ。

「グローディ」

 だってそう呼ぶと、彼が満足そうに微笑むから。
 その顔を見たら、俺はもう、なんだかそれだけでいいように、思えるようになっているのだった。
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