悪役王妃(♂)は後宮で国王陛下に愛される

愛早さくら

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 元々の前提として、この世界には、前世なるものを覚えていたり、突然思い出したりする者がそれなりの数存在している。
 具体的に言うならば、百人から千人に一人ぐらいの割合で。
 一桁も幅があるのだが、地域などによっても差があるのでこうなる。場所によっては百人に一人ぐらい存在するし、そうかと思えば千人に一人ぐらいしか見かけないような場所もあるのだ。
 ちなみに、多いのは主に都市部で、農村部など、人の密集していないところだと少なくなるのだが、これはひとえに、前世を思い出したり、覚えていたりする者の多くがより人の多い都市部を好む傾向にあるからだ。そちらの方が暮らしやすいのだと聞いているし、俺もそうだろうなと思う。何故なら俺自身が、いわゆる前世なのだろう記憶を所持しているが故に。
 前世で俺は、日本人だった、と思う。確か女性だったはずだ。
 もう随分曖昧になってしまっているので、名前だとか詳細は忘れてしまったのだが、幼少期はもう少しはっきりと覚えていた。
 なにせ俺はおそらく、生れた時、否、生れる前から、そんな記憶を所持していたような気がするから。
 けれど、成長するにつれて、記憶は次第に薄れ、もう随分と思い出せなくなってしまっていて、今となってはもう、幼少期に覚書のように書き連ねた文章を読んでようやく思い出せるような有り様となっている。
 そんな幼少期に書き連ねた覚書の中で、俺が特に気になっているものがあった。
 それは趣味か何かだったのか、よほど印象深かったのか、いくつかあった、漫画やアニメ、ゲームなどの物語である。
 何分、幼かったので散文もいいところだったのだが、つなぎ合わせて理解できたのは、どうやらこの世界に似たゲームか何かを、前世でプレイしたことがあるということ。
 この世界は、前世から見るといわゆる異世界と呼べるような世界で、俺はつまり、ゲームの世界へ異世界転生でもしてしまったかのような状態であるということだった。
 なお、これは前世を覚えていたり、思い出したりした者によく見られる傾向で、人によっては、小説だと言ってみたり、漫画だと思っていたり、はたまたアニメであったり、色々であるらしい。
 幸いと言えば良いのか何なのか、母も、やはり前世の記憶を所持していて、この世界や自分の名前、状況などとよく似た設定のゲームをプレイした記憶があると言っていて、俺の状態にも理解を示してくれていた。
 だからこそ、の先ほどの問答。俺に辞めるようにと説得しているのだろうけれども。
 母も、その前世でプレイしたというゲームだか何だかとは全く違う人生を歩んでいるくせに、いったい何を言っているのか。
 いくら俺も、母と同じように、前世でプレイしたゲームと類似した名前や状況・・・・・・・・・にある国に嫁ぐとは言っても、同じ展開を迎えるとは限らない。心配には及ばないはずだ、そう思った。
 そう、俺は今から、前世でプレイしたゲームの舞台となる、ルティル王国へと嫁ぐのである。
 否、現状では結果的に嫁ぐこととなるかどうかは決まっていないのだが、嫁ぐ前提で、王妃候補として向かう。
 ゲームでは悪役王妃として、命を落とすこととなる国へと。
 だから、母の心配は、実際の所、わからないでもないことではあるのだった。
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