3 / 6
01-2
しおりを挟む元々の前提として、この世界には、前世なるものを覚えていたり、突然思い出したりする者がそれなりの数存在している。
具体的に言うならば、百人から千人に一人ぐらいの割合で。
一桁も幅があるのだが、地域などによっても差があるのでこうなる。場所によっては百人に一人ぐらい存在するし、そうかと思えば千人に一人ぐらいしか見かけないような場所もあるのだ。
ちなみに、多いのは主に都市部で、農村部など、人の密集していないところだと少なくなるのだが、これはひとえに、前世を思い出したり、覚えていたりする者の多くがより人の多い都市部を好む傾向にあるからだ。そちらの方が暮らしやすいのだと聞いているし、俺もそうだろうなと思う。何故なら俺自身が、いわゆる前世なのだろう記憶を所持しているが故に。
前世で俺は、日本人だった、と思う。確か女性だったはずだ。
もう随分曖昧になってしまっているので、名前だとか詳細は忘れてしまったのだが、幼少期はもう少しはっきりと覚えていた。
なにせ俺はおそらく、生れた時、否、生れる前から、そんな記憶を所持していたような気がするから。
けれど、成長するにつれて、記憶は次第に薄れ、もう随分と思い出せなくなってしまっていて、今となってはもう、幼少期に覚書のように書き連ねた文章を読んでようやく思い出せるような有り様となっている。
そんな幼少期に書き連ねた覚書の中で、俺が特に気になっているものがあった。
それは趣味か何かだったのか、よほど印象深かったのか、いくつかあった、漫画やアニメ、ゲームなどの物語である。
何分、幼かったので散文もいいところだったのだが、つなぎ合わせて理解できたのは、どうやらこの世界に似たゲームか何かを、前世でプレイしたことがあるということ。
この世界は、前世から見るといわゆる異世界と呼べるような世界で、俺はつまり、ゲームの世界へ異世界転生でもしてしまったかのような状態であるということだった。
なお、これは前世を覚えていたり、思い出したりした者によく見られる傾向で、人によっては、小説だと言ってみたり、漫画だと思っていたり、はたまたアニメであったり、色々であるらしい。
幸いと言えば良いのか何なのか、母も、やはり前世の記憶を所持していて、この世界や自分の名前、状況などとよく似た設定のゲームをプレイした記憶があると言っていて、俺の状態にも理解を示してくれていた。
だからこそ、の先ほどの問答。俺に辞めるようにと説得しているのだろうけれども。
母も、その前世でプレイしたというゲームだか何だかとは全く違う人生を歩んでいるくせに、いったい何を言っているのか。
いくら俺も、母と同じように、前世でプレイしたゲームと類似した名前や状況にある国に嫁ぐとは言っても、同じ展開を迎えるとは限らない。心配には及ばないはずだ、そう思った。
そう、俺は今から、前世でプレイしたゲームの舞台となる、ルティル王国へと嫁ぐのである。
否、現状では結果的に嫁ぐこととなるかどうかは決まっていないのだが、嫁ぐ前提で、王妃候補として向かう。
ゲームでは悪役王妃として、命を落とすこととなる国へと。
だから、母の心配は、実際の所、わからないでもないことではあるのだった。
43
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる