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しおりを挟む真っ直ぐで純粋。人の好意を基本的には疑ったりなんかしない。
多分、今の俺の方が、よっぽどひねくれていることだろう。
それらひとえに周囲からの愛があったればこそ。
いつも柔らかく微笑んで、大きな自己主張さえしたりしない。
それは自らの望みが、口に出したり強く求めたりしなくても、全て叶ってきたからだ。
なにせ常に傍にいるラティは注意深くルニアの様子を見守っていて、例えば喉が渇いただとか、そういった些細な要求でさえも、ルニアが何も言う前にすぐに叶えているような有り様だった。
他など言わずもがなだったろう。
皆に求められ、認められてきたからこそ、自己主張などする必要がなかった。
そんなことせずとも、少なくともラティの注意が常に自分にあることを、おそらくルニアは知らず理解していたのだろうと思う。
俺の中で残っている記憶がそう言っていた。
とは言え、だからと言ってラティの要求を、ルニアの方も、特に支障がない限り受け入れ続けていたようではあるのだが。それは勿論、夜のことなどについても。
純粋なルニアは、ラティの、
『婚姻したのだから、これぐらい当然のことだよ』
なんて言葉をそのまま信じて、ラティを一切拒絶しなかった。
あまりに長く、感じすぎて辛かったり怖かったりしても。幼い頃から、ラティのことを信頼しきっていたが故に。
今の俺ならわかる。
どう考えても歪んでいる。
否、それでもルニアに不満がなかった以上、それで問題はなかったのだろうけれど。
ラティの愛は、どこまでもただ重かった。
勿論、それが嫌なわけではない。今も、嫌悪感を覚えるだなんてことはないのだ。
そうではないのだけれど、それでも。
(限度ってもんが、あるんだよなぁ……)
どう考えても、おそらく、今の俺ではうまく受け入れられるとは思えなかった。
いつも穏やかで柔らかな雰囲気のルニア。
そんなもの、どこが小説と同じだというのだろう。
ここは小説の中の世界とは違う。
似ている所は多々あれど、どんな風に捉えたって違うのだ。
依然重怠いままの体は、ソファに身を預けきると、どこまでも沈んでいくような気がした。
思い出す。
今度は、おそらくは前世だと思われるそれを。
半ば微睡むようにしてシェラがお茶やらや軽食やらの用意をしているらしい気配を感じながら、俺はゆっくりと口を開いた。
「前世で、さ……俺、なんて名前だったかとかもよく覚えてないんだけど、なんかいっつも一人だった気がする。学校行ってた時は、朝起きて、学校行って、勉強して、帰ってきて、また勉強して、寝て。就職してからは、学校が会社に変わっただけだった。ああ、多分庶民だったと思う。今の、王族、とかみたいに立場があるような存在じゃなかった。朝起きて、仕事行って、帰ってきて、寝て、また朝起きて。どんな人生だったんだろうな……そういうのは、ひどく曖昧なんだ……」
自分の中で、整理する意図もあった。
ぼんやりと、思いつくまま、ただ言葉を紡いでいく。
シェラがじっと耳を傾けているのがわかる。
それに気付いていながらも反応せず、否シェラも反応しないからこそ、その無反応に後押しされるかのよう、更に言葉を続けていった。
とりとめもない、前世の話を。
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