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しおりを挟むラティはいわゆるところのスパダリである。
少なくとも、小説を読んだ俺の感想としては。
同時にそのイメージは、ルニアとしての記憶を思い出しても、そう大きくは違わない。
見た目は勿論、男らしくも美形でかっこよく、非の打ち所がない。
センスだとかもあって、ダンスとか絵画とか、芸術の分野においても問題はなく、更に魔力操作は勿論、魔法や魔術、あるいは体術や剣術と言った武術。勿論、座学なども含め、何もかもが完璧で、俺はラティが何か上手く出来ていなかった、なんてことを全く知らなかった。
初等部の入学、つまり6歳だとか7歳だとかからほとんど離れず育ってきているにもかかわらず、だ。
ラティに出来ないことなんて何もなかった。
と、ルニアにはそう見えていた。
実際にはラティにしかわからない部分はあるとは思う。
だけど教師などの態度からしても、ラティが何かに劣っていただとか言うようなことは一度もなくて。
ちなみに、それ自体は、実はルニアもあまり違いはない。
多少の得意ではない、はあっても、出来ないはなかった。
その点ラティは得意ではない、すらなかったように思うので、ルニアよりも実際にあらゆる面において優秀だったことだろう。
加えてルニアに対しては、これでもかというほど、いっそ甘いと言っていいぐらいには優しくて。
願ったことはなんでも叶えてくれるし、いつも穏やかにルニアに寄り添ってくれていた。
小説の中のラティも同じだ。
元は平民だったのもあり、またルニアの所為もあって、いろいろ不安だったり不安定だったりするシェラを支え、寄り添い、守っていたように覚えている。
幼い頃から、ルニアにそうしてくれていたように。
小説の中のラティが厳しい態度を取っていたのなんて、それこそルニアに対してぐらい。
だけどそれは、そうせざるを得ないほど、ルニアの態度がよろしくなかった所為だ。
だって小説の中のルニアは、ラティを嫌い抜いていたから。
婚約者という関係であることも全く許せなかったようで、読んでいて眉を潜めたくなるほど、ひどい態度でラティに接していた。
その先に最後の方になるとルニアは国家転覆だとかまで目論むのだ。
そんなルニアにどうして、穏やかに接せられるというのだろう。
でも、そんなルニアに対してだって、情け深く思いやりにあふれたラティは、最後の最後に救いの手を差し出そうとしていたほど。
もっともルニアはそんな手など振り払って、最期には自滅してしまっていたけれど。
とにかくラティは完璧にかっこよかったのである。
なのに今は実際に、ルニアの意思など無視して、ルニアを部屋に閉じ込めている。
どうしても小説の中の、否、記憶の中の。完璧と言っていいようなラティと、俺を閉じ込めるラティとがつながらなかった。
だって本来のラティは懐も大きく寛容なのだ。
ことの発端とも言える、あまりにも長時間に及ぶ過ぎまくった寵愛は、その前の俺の、『離縁』だとかを口にした失言があるし、ラティが言った通り、『愛を示した』のだとすれば理解できなくもない。
もちろん、それもまぁ、酷いとは思うけれど。
でも、その後はどうだろうか。
いくら心配だからと言って、閉じ込めるのではなく、例えばルニアがやりたいと思うようなことを妨げたりせず、完璧に守ることをやり遂げるはずだ。
護衛を増やすだとか、事前に周りを整えるだとかして、閉じ込めたりなんてしない。
だけどラティは実際には俺に、部屋から出ないようにと言ってきた。
心配だから、安心できないからとそう告げて。
それでいて、両親と連絡を取ったりだとかまで妨げたりしなかったし、俺自身が部屋からさえ出なければ、部屋の中で何をしていようとも、咎めようとしているような気配はなかった。
そこはかとなく感じる矛盾。
それはいったいどうしてなのだろう。
どれだけ考えても、俺にはちっともわからなくて。
「ほんと、マジ……俺はいったい何をどう考えて……どうすればいいんだろう、な……」
俺は途方に暮れたように。そう呟きながら深く、深く溜め息を吐いたのだった。
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