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33-1・新しい日々、なのに
しおりを挟む『子供を産む』ということがこの世界においてどういうことなのか。
実のところ俺はわかっているようでわかっていなかった。
否、知識としてはある。
忘れていない。
なぜならば初等教育で習う内容だからだ。
魔法魔術理論などの一環として。
必要となるのは突き詰めれば魔力操作でしかない。
この世界は前世とは基本的な成り立ちからして違っている。
勿論、魔法やら魔術やら魔力やらがある時点で同じわけはないのだが、特に魔力に関してが最も重要かつ最大の違いと言えることだろう。
なにせ肉体そのものですら、あくまでも魔力を『個』として留めておくための『器』に過ぎないのだから。
そしてそのことが関係しているのか何なのか、母体の胎内に父親となる他者からの魔力の注入によって生成された『子供』は母体内においては肉体を持たない。
母親とは別の『個』と成った魔力の塊のまま、母体内で育まれていく。
『器』さえあれば母体から出ても『個』のまま存在し続けられるようになるまで。
ならばいつ肉体という器を持つのか。
つまり、母体から出て肉体を持つことこそが『子供を産む』ということに他ならないのである。
何より子供の肉体を生成するのは多くの場合『父親』であり、だからこそ『父親』たり得るとも言えた。
簡単に言うならば、子供を取り上げるのは『父親』ということだ。
なお、母体内において、子供は肉体を持たないので母体が感じられる『胎動』は自分とは違う魔力の脈動のみ。
子供を成して半年ほど後から産み月まで、だんだんと母体の下腹部が膨らんでくるのは、増えた魔力の分だけ器を広げるという意味しかなく、その中に肉体が入っているわけではない。
加えて意識や知識として、『そういうものだ』という認識による部分も大きかった。
とにかくそう言った理論的なものも含めて、知識がないわけではない。
ないわけでは、ないのだけれど。
(魔力ってのをほとんど意識してなかったのもあるのかもしれない。そもそも日常生活において魔術なんてちっとも使わないし)
魔力そのものはごく自然に常に感知していたが、ならば逆に魔術を行使する必要があるかというと、少なくともルニアが前世の記憶を思い出して以降、そんな場面に行き会ったことは一度もなかった。
精々が治癒魔術ぐらいだろうか。
それも魔力操作に毛が生えた程度のもの。
あくまでも動くのに支障がなくなるようにするものにすぎず、それさえ大部分はラティから施されているような有り様で。
とはいえ、妊娠中で出来るだけ魔力を行使しない方がよかったというのもあるのだけれど。
魔法やら魔術やらは苦手ではなかったはずなのにもかかわらず、だ。
部屋からさえほとんど出ない生活の中で魔法やら魔術やらが差し挟まれるような余地がそもそもなかった。
だからというのもある。
それらがいったい何をもたらしたのか。
結論から言うと、ほとんど痛みなど感じないはずの『出産』において、俺は体内から魔力を抜き出される感覚を、壮絶な『痛み』として認識したのである。
そういうものではないと、知っていたはずなのに。
(だって『出産』って痛いものなんだろう?)
もっともそれは、『前世を思い出した者』にはままあることではあるらしかったけど。
(あんまり思い出したくない……)
数ヶ月経った今もそう思う。
なお落ち着いたら魔法魔術の実践訓練を多少なり行った方がいいと推奨されたのは言うまでもない。
立派に成人した大人としては、情けないことこの上ないのは間違いなかった。
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