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しおりを挟むドキドキする。
心臓の音が煩い。
本当はラティ以外に意識なんて向けたくない、だけどそれでは今のまま、シェラと接し続けることになる。
せっかく水を向けてくれたラティの気遣いを無碍にしたくもない。
俺はきゅっと眉根を寄せ、何とか躊躇いながら口を開いた。
「……はっきり何か理由があるだとか……そういうわけじゃ、ないんだ……」
だけど、だからこそ、どうすればいいのかわからない。
知らず目を伏せた俺を、きっとラティは注意深く見守ってくれていることだろう。
微かに感じられた、そんな視線に後押しされるように、更に言葉を続けていく。
「シェラが何かおかしなことをしただとか、そういうわけでもないし、せっかく学び直してきてくれた、それが無駄になっているだとか、そういうわけでもない。シェラは元からよく気遣いが出来るし、俺の意をよく汲んでくれてるのもわかってる、おかしいのはシェラじゃなくて俺なんだ、だから……」
だから、迷う。
シェラにはきっと悪いところなんて何もないのだ。
俺には自覚がある。
問題が俺の中にしかなく、シェラは言うならば俺に振り回されているだけなのだろうという自覚だ。
俺が、シェラを振り回している。
ただ俺が安心したいが為だけにシェラを言わば拘束している。
俺の側へと。
俺は王族で、だからこそそんな勝手が許されるだなんて思わない。
本人が望んでいるわけでもないのに傍に留め置くだなんて、そもそもただの俺の我儘のようなものなのだ。
その上、今度は遠ざけようとしている。
またしてもただただ、俺の都合で!
言葉を詰まらせる俺を、ラティがそっと抱きしめてくれる。
触れ合った素肌から、落ち着いてきたラティの心音が、規則正しく伝わってきた。
そんな些細なことに安心して、俺は一つ息を吐き、自分の心の迷いをそのまま拙く言葉に乗せていく。
「どうすれば、いいのか、わからない……シェラが目の届く場所にいると安心する。それは本当なんだ、前と変わらない。なのにそんな自分自身のことをおかしいと思うし、そんな風におかしくなる自分が怖い。それにどうしてか、シェラに、子供に触れて欲しくなくて……」
シェラと子供を近づけたくないと思っている俺がいる。
ラティは柔らかく俺を抱きしめたまま、俺の言葉に耳を傾け続けてくれていた。
ただ黙って、俺の言葉を待ってくれる。
否、本当は言葉ではなく、俺のどうにも不安定に揺れる気持ちが少しでも落ち着くのをこそ、きっと待ってくれているのだろう。
宥めるような手が優しくて、なんだか泣きたいような心地になった。
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