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36-1・不審を抱く
しおりを挟むラティがどこまでも俺に甘いことを俺は知っていた。
その上で持ちかける相談が、俺に都合よくならないわけがない。
俺の気持ちを、考えをラティに伝えて。少しだけ自分の気持ちを整理して。
具体的に何か打開策が講じられたわけではない。
いっそすぐにでもシェラを遠ざけようとするラティに少し待って欲しいと願い出て、俺自身の状態次第だとは言われつつも、今しばらくは様子を見ることをラティは了承してくれた。
そうして更に数日。
流石に、と言えば良いのか、シェラ以外の者へ根回しし、可能な限り覚られない程度にシェラを俺の側から離すようにして……――勿論、子供には極力触れさせず。努めて心落ち着けてシェラと過ごすように試してみた結果、俺の中に芽生えたのは不審である。
改めて、考えてみる限り、そもそもがおかしな話だったのだ。
いくら理由があるとは言っても、なぜこうもシェラにだけ俺はおかしな反応をしてしまうのか。
もちろん、シェラ以外にも故国にいる家族や義家族と言えば良いのか、ラティの両親や兄弟、その他では昔から馴染みの護衛や女官、側仕えなど、全てを同じと考えているわけでは当然ない。ラティなど言わずもがなだろう。
だけどシェラほど、俺自身が不安定になってしまうような人物が存在しないこともまた、間違いようもない事実だった。
それこそ、シェラを上回るのはラティだけなのだ。
ラティが特別なのは当たり前の話だ。
むしろラティ以外にどうしてそんなにも大きな感情を動かされることがあるというのだろう。
そしてシェラは家族どころか、昔から側にいてくれた護衛をはじめとした女官や使用人たちですらない、学園で初めて会った同級生に過ぎなかった。
前世からの影響があるにしても、どう考えても異常だとしか思えない。
(だからこそラティもシェラを警戒しているんだろう……)
もし逆の立場だとしたら、俺はきっと、全く平気ではないことだろう。
今以上におかしなことになるのではないかとすら思う。
前世で好んでいたBL小説を思い出すと、今でも。
(ラティの傍らにいるのはシェラだというイメージがある)
だけど。
今更それを受け入れられるかというとそれは確実に別の話。
(ラティが俺以外に、例えば俺がシェラに抱くような感情を抱いているとしたらだなんて、考えることさえ凄く嫌だ)
なるほど、ラティがシェラをすぐにも遠ざけたがるのは当たり前の話と言えた。
むしろ俺が願うからと現状を受け入れてくれている辺り、ラティはつくづく俺に甘いと言わざるを得ないのだろう。
そんなラティの対応が正しく俺を気遣っているが故であることを、俺は疑ったりしないのだ。
今までラティと築いてきた関係があるからこそ。
(でも、シェラは……――)
なら、シェラはどうだろうか。
何処をどう思い返しても、シェラとルニアとの間に、それほどまでに濃い何かがあったようには少しだって思えなかった。
そう、
(はじめから――……ただ俺が一方的に執着していた)
理由はある。
理由はあるのだ、だけど。
(理由があるからと言って、ここまでおかしなことになるとは思えない)
同時にシェラが、例えば魔術などを駆使して、何か良くないことを企んでいるというわけでも決してないのだった。
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