【完結】子供が欲しい俺と、心配するアイツの攻防

愛早さくら

文字の大きさ
6 / 11

*6

しおりを挟む

 キスが、初めてだったのだ。
 当然、唇を舌で開かされたことも、ましてや口の中を誰かに舐められたことなんてない。
 舌で舌に触れる、初めて感じた、唾液の絡んだぬるぬるとした感触に、俺はやっぱり初めてと思われる興奮を覚えていた。
 前世でなら自慰、つまりオナニーの経験はあるし、達する感覚もわかる。はずだ。
 興奮もしたことはある、はずなのに違う。
 今まで俺が知っていたことは、ただの反射だったのだと思い知る。
 だってこんなにも熱くて、ドキドキして、ずくずくして。体の奥が疼いて、もっと欲しいと感じるなんて。
 唾液に混じった、フィムの魔力が濃い。
 粘度を伴って、俺に入ってくる。
 自分以外の誰かの魔力を注がれる時特有の、くらくらするような酩酊感。
 これまで経験したことのある、治癒魔術を行使される時だとかの、他者の魔力を受け入れる時に覚えた違和感と、きっと同じもののはずなのに違う。
 だって、こんなに濃くて熱くて多いなんて。
 そんなの、本当に経験がない。
 否、きっと生まれる前や生まれたばかりの頃、存在を安定させるために、母親から受けていた授乳・・と同じか、それよりずっと濃くて甘いからなのだろう。流石に、そんなに小さな頃の記憶はないし、だから、意識としてはやっぱり本当に初めてで。
 そう、甘い。甘いのだ。
 こんなにも甘く感じるのは、フィムが俺を求めてくれているからに違いない。
 フィムの感情が俺に、フィムの魔力を甘く感じさせている。そうとしか思えなかった。
 だって、これまで授業だとかでそんなことを習ったことがあって、ああ、これが、と、今、初めて実感しているのだ。
 頭の何処かが冷静にそんなことを考えている一方、ふわふわと俺の中がフィムでいっぱいになっていくのも本当で。
 俺の口は体格に見合って大きくはないから、口ごと全部、フィムに食べられているかのようだった。
 すっぽりとフィムのそれに入ってしまうのだ。
 吐く息も余さず貪られて。

「ん、ん、ん、ふ、んんっ……! ぁんっ、」

 唇を塞がれているから、漏れるのは鼻にかかったような喘ぎだけ。
 俺と、そして俺よりは微かだけどフィムのそれ。
 二人、意図せずに喘ぎながら舌を絡め続けた。
 いつの間にか、俺の体は力が全く入らなくなってしまっていて、フィムにすっかり全身を預けきっている。
 口の中を、フィムの分厚い舌でいっぱいにして、それ以上にもっと、体全部をフィムの気配でいっぱいに満たして。
 ああ、フィム、フィム、フィム。
 自分がいったい今、どんな状態になっているのかがもうよくわからない。
 ただ、気持ちよくて、熱くて、熱くて。

「ぁっ、ぁあっ……ん、ぁ!」

 腰かけていたはずのベッドの上に押し倒され、覆い被さられて。
 唇がいつの間にか解放されていたことにも気づかず、俺はただ、ぼやけた思考のまま、声を上げていた。

「ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁあっ……!」

 着ていた寝間着を、いったいいつ、剥ぎ取られてしまったのか。
 フィムの手が、俺の素肌に直接触れて。手のひらの熱さに思考全部が、支配されるかのようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

好きだから手放したら捕まった

鳴海
BL
隣に住む幼馴染である子爵子息とは6才の頃から婚約関係にあった伯爵子息エミリオン。お互いがお互いを大好きで、心から思い合っている二人だったが、ある日、エミリオンは自分たちの婚約が正式に成されておらず、口約束にすぎないものでしかないことを父親に知らされる。そして、身分差を理由に、見せかけだけでしかなかった婚約を完全に解消するよう命じられてしまう。 ※異性、同性関わらず婚姻も出産もできる世界観です。 ※毎週日曜日の21:00に投稿予約済   本編5話+おまけ1話 全6話   本編最終話とおまけは同時投稿します。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました

天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。 そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。 はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。 優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。 「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

処理中です...