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第1章
1-50・未明。だから次へ⑧
しおりを挟む宰相に時間を取ってほしい旨を申し出てようやくそれが適ったのは、初めの申し出からなんと一週間以上経ってからのことだった。
なんでも、彼は彼で忙しくしているようだったとのこと、挨拶程度ならともかく、そうでないなら少し待ってほしいと告げられ、言われるがままに待った結果である。
その間に、実はルスフォルの様子の方が先に少し変わってきていて、俺はそれはそれでまた戸惑うようになっていたのだが、そんな風に、彼に変化があるぐらいの期間、待たされたということに他ならなかった。
指定された、おそらくは宰相がいつも仕事をしている執務室に一番近いのだろう、それほど広くない応接室のような一室で対峙する。
ちなみにこの部屋は俺のいつもいる王妃用の執務室からはそれなりに遠く、もし他の部屋でとなると、もっと更に待たなければならなくなりそうだったので妥協した結果だった。
俺は実の所、連夜長時間求められ続けているせいもあって、常にあまり体調がよくなくて、否、明確に不調だというわけではないのだが、それでも可能な限り必要最低限以上は出歩きたくなかったのだが仕方がない。
なお、そのような状態でも王太子の元へ通う足は、全く控えていないのだがそれはともかく。それに関しては必要最低限どころか、俺の中では一番重要な必要なことなので。
もしやここでも更に待たされるのではないかと危惧したが、幸いにして俺が着くとすでに宰相は席に着いていた。
俺に気付いて立ち上がり、礼を取るのを目にして鷹揚に頷く。
意外だったのは、俺に対してそういう態度を取りながら、抵抗感だったり、屈辱感だったりなどを覚えているようには全く見えなかったこと。
10年前には氷のように冷たい視線に晒された記憶があるので、正直に言うと驚いた。
勿論、だからと言って親しみが籠っているわけでも、歓迎しているという風でもない。同時に値踏みしているだとか試しているだとかいうようにも見えなかった。
「お待たせしてしまいましたね」
一応はと口に出すと、男が小さく首を横に振る。
決して若くはない、だが、かと言って中年というには少し足りない、壮年ぐらいに見える男性だ。
12年前。俺が初めてこの王宮に訪れた時には、男はすでに宰相位についていて、そもそも、ルスフォルを連れ戻すという決定を下したのも、彼と騎士団長である侯爵とが中心となった者達だったと聞いている。
その頃から見た目がほとんど変わっていない。
なら、さて実年齢はどれぐらいだろうか。
彼も貴族だったはずで、確か出身家は辺境伯爵家だと聞いている。結局爵位は継いでいないようだが、別に個人で伯爵位を叙爵している。おそらくは宰相に就くための地位だろう。
そこからもわかるとおり、魔力量も貴族位に相応しい程度に持っているようなので、見た目からは年齢を推測しきれないのだった。
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