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第1章
1-118・告白。さきへ君と㉖(ルスフォル視点)
しおりを挟む俺はあっけにとられたまま、どうすればいいのかわからずリモヌツ公爵を眺めることしかできなかった。
しばらくそうしていたかと思えば、そのうちリモヌツ公爵の方の震えが収まってきて、どうやら少しばかり落ち着いてきたらしいことが見て取れた。
グニトリス国王が頭が痛いと言った様子で、難しい顔をしている。
そうだろうなと俺は思った。
また、リモヌツ公爵を抜かして、俺と二人で何か話すだとか言うつもりはグニトリス国王にはないらしいと知った。
否、隣に座るリモヌツ公爵が気になって何も口を開けないのか。そのくせ慰めるわけでもなく放置しているのだからよくわからない。
感情表現が激しいだと言っただろうか。
ティーシャを思い出す。
王妃という立場に相応しく、容易に内情をひけらかしたりしないその姿を。
夜、閨を共にする時でさえ、彼は自信の感情を抑え込んでいるようにさえ見えた。
そんなティーシャを、この人が育てた?
俄かには信じられない。
もしくは心を壊していたというティーシャには、この激しさが功を奏したとでも言うのだろうか。
あながち、ないわけでもなさそうだなと思いながら気まずく様子をうかがう俺の目の前で、そこでようやくリモヌツ公爵が、まだ少ししゃくり上げながらではあるが顔を上げた。
「ぼ、僕は、君が嫌いだ」
そして唐突にそんなことを言い放つ。
嫌い。
それはまた随分と幼い表現だ。
「そ、そうですか……」
俺は意味のない相槌を打った。それ以外にいったい何をどう返せばよかったというのだろう。
グニトリス国王は相変わらず頭を抱え込まんばかり。
「そうですか、って何っ?! 僕に嫌われてもどうでもいいって言うの?! そもそも僕はねぇ、今回の輿入れには反対だったんだ! よりにも寄って相手が君だなんてっ……なのにティーシャくんが……ぅっ……ぅうっ……」
かっと一気に激昂したかと思えば、またしてもわっと泣き始める。
俺はただぼんやりと、何をどう返せばいいの変わらず、たった今、公爵が告げた言葉を咀嚼していた。
今回の輿入れ。公爵は反対だったのか。
それは全く寝耳に水だった。
もっとも、そもそも、リセデオに俺の妃を、と打診したことも後から知ったし、その返答として、王家には該当の者がいないので、リモヌツ公爵家の者が来るという話だって、俺に知らされたのは、全てがとっくに整った後。
俺は言われるがまま、ティーシャを迎え入れたに過ぎず、そこに俺の意思は全く差し挟まっていなかったのだがおそらくはそんなこと、この人には一切関係がないんだろうなと、微か、内心で考えていた。
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