【完結】おいでませ!黄昏喫茶へ~ココは狭間の喫茶店~

愛早さくら

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第弐話

2-10・新しい部屋

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 俺は家でそうしたようにキョウさんの紅茶を淹れた後に続けて自分の分も用意した。これも家と同じく、キョウさんにそうしたほどには、自分用の紅茶に気など使わない。
 こだわりもなく、言い方は悪いが何でもいいからだ。
 コーヒーでも紅茶でもいいし、でも新たにコーヒーの用意を出すのは面倒で、紅茶で済ませたにすぎず。
 かちゃとキョウさんに丁寧に淹れた方のカップを差し出し、向かい側の席に、それよりも適当な自分用のカップを置いた。

「砂糖とミルク、どうします?」

 そう言えば予め用意するのを忘れていたと、今になって思い至り訊ねると、キョウさんはしばし考えて。

「んー、このままでいいや。ありがとね」

 にしゃと笑って礼を言ってくれた。
 俺はキョウさんの向かい側の席の椅子を引いて、そこに腰掛ける。

「いえ、俺が淹れたので美味しくないかもしれませんし」
「ああ、いい、いい。私こだわりないし。うん、美味しい美味しい」

 言いながらカップに口を付けて一口すすり、一応は味を確認してから、しかしやはり適当に感想を述べた。
 ちっとも本当にそう思っているとは思えない言い方で、一瞬、顔をしかめてしまったが、すぐにまぁいいかと思い直す。

「はは。なんだよぉ、怒るなよぉ。適当に言ったけど、ちゃんと上手いこと淹れられてるって」

 そんな俺の一瞬の不機嫌を敏感に拾ったキョウさんは重ねてフォローのようなものを入れてくれるが、そこまで気分を害したわけでもなかったのでなんだか逆に申し訳なくなってしまった。

「あ、いや、大丈夫です、なんかすみません……」

 口から滑り出たのは意味のない謝罪。
 キョウさんは器用に片眉を上げて俺を見て、

「そう? ならいいけどさぁー」

 と、適当に流し、紅茶を味わうのに戻った。
 温かいものを飲むと、先程少し寒く感じた体が、じんわりと温まっていく。
 ほっと息を吐いて二人、向かい合わせに座って、それ以上は言葉もなく、しばし体を温めて。

「うん、よし、行こうか」

 飲みきってしばらく、タイミングを見計らっていたかのようにキョウさんが口を開きながら席を立った。

「あ、はい」

 俺も後に続いて立ち上がる。
 一応と、使用したカップを取り急ぎカウンターに戻すだけは戻して、洗うのは後ですることにした。
 二階へと続く扉へ向かうの見て、ごくり、一つ息を飲む。
 キョウさん曰くのお仕事の時にしか、その扉をくぐったことがなかった。
 だからだろうか、なんだか妙に緊張して。そんな俺を見て、キョウさんはからからと笑い、無造作に扉を開いてさっさと階段を昇っていく。

「そんな緊張しなくても大丈夫だって。あの部屋が見える・・・・・・・・なら、そのまましばらくココで住めばいいってだけだしさ。ダメだったらダメだったで、その時また考えよ。少なくとも、ココなら安全なはずだよ。気楽にいこ!」

 などと言葉が言い終わらないうちに二階に着いたキョウさんは、俺の目の前でやはり無造作に扉を開け放った。
 バチン、灯りを点ける。

「ほら、レンゲ。あれ見える?」

 言いながら示された方へ視線を向けると、果たしてそこには確かに、この間までは気付かなかった扉が一つ、存在していたのだった。
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