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4・これまで
しおりを挟むルーミス殿下は基本的に、目立って私を気遣って下さったことなどなかった。
いつもいっそ誰に対しても不愛想で無表情な方で、笑っていらっしゃる姿など見たこともない。だけど。
『よく頑張っているんじゃないか』
そんな風に労いのような言葉をかけて頂いたことがあった。
決まって幼い私がくじけそうになっていた時だ。
また、他にも、
『出来ることを常に精一杯に熟すことは当たり前のことだ。しかしその持続が容易ではないことぐらいは私も理解している』
だとか言うようなことを呟かれておられたこともある。
それはもしかしたらご自身に言い聞かせていらしたのかもしれないし、私へのお言葉ではなかったのかもしれない。
だけど、そのような些細なお言葉も、私の胸には強く響いたし、あるいは、
『君なら出来るだろう』
などと当然のように言いきられるのも、信頼されているようで誇らしくなった。
ルーミス殿下ご自身も大変に努力しておられたのも間違いないのだ。
私と同じように、否、時には私以上に、勉強にも鍛錬にも励んでおられた。
勉学に関しては努力が実を結んだのか、私も決してルーミス殿下に見劣る、などと言うようなことはなかったし、実際に学園の成績でも基本的にはルーミス殿下の上にいさせて頂いている。
ただしもちろん、その代わりのように鍛錬だとか魔法、魔術だとかに関してはルーミス殿下に今一歩及ばなかった。
ルーミス殿下はそれを咎められたりもなさらないし、得意げになさっていらしたこともない。
ルーミス殿下は常に、自然体でいらっしゃるのだ。
泰然としておられると言えばいいのか。
婚約者としての最低限以上に私に構うようなことはなかったけれども、反対に蔑ろにしたり拒絶したりなさったこともなかった。
誕生日のような記念日の贈り物や、お茶会などのような社交の際のドレスの手配など、ルーミス殿下ご自身の手配かはともかく、そう言ったことを欠かされたことはなかったし、しかしその逆に、それなりの時間共にいても、親しく話したことなどもなかった。
(私は、ルーミス殿下にきっと好かれてはいない……)
そう思い知るに充分なほど、ルーミス殿下はとにかく、私に寄り添おうとはしておられなかったのだ。
辛くないと言えば嘘だった。
特に十代になり、不器用ながら、否、いやいやであっても、それでも義務を怠らないルーミス殿下を、私はいつの間にかお慕いしていたようだと自覚してからは、なんとなく苦しく思うことも多く、そんな私が出来たのは、その時々で出来ることを精一杯頑張っていくことだけ。
好かれてはいなくても。
邪魔にだけはならないようにしよう、ルーミス殿下の足を引っ張ったりしないように。
それだけを志して、これまでを過ごしてきたのである。
そういったこれまでの私の努力を、まさかルーミス殿下以外に無下にされるとは、私は思ってもみなかった。
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