【完結】可愛げがないと糾弾されましたが婚約者にはそこが可愛いと言われたので問題ございません!

愛早さくら

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5・隣国の王太子

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 私のこれまでをこき下ろしたのは、高等部から我が国に留学してきた、隣国であるオシュニル王国の王太子、キューミオ・オシュニル第一王子殿下だった。
 私がキューミオ殿下と初めてお会いしたのは、高等部の入学式の時である。
 学園ではいち留学生とは言え隣国の王太子。国としては国賓に等しい。
 私はルーミス殿下の婚約者として、ルーミス殿下に続いてキューミオ殿下に挨拶をした。

「お初にお目にかかります。我が国、我が学園へようこそいらっしゃいました。私はグルフリム公爵家が長女であり、我が国王太子であるルーミス殿下と婚約させて頂いております、プラリティファ・グルフリム。どうぞお気軽にラーファとお呼び下さい。我々は我が婚約者であられる、ルーミス殿下と共に、キューミオ・オシュニル王太子殿下を歓迎致します」

 迷うわけのない口調、淀みのない仕草、そして完璧なカーテシー。
 それぞれの国のマナーなどに照らし合わせても、私のとった挨拶には全く不足などなかったと思う。
 隣にいるルーミス殿下も特に何を思う様子もなく受け入れていた。
 なのに、返されたのは、

「ふぅん?」

 などと値踏みするような不躾な視線。
 次いではっと嘲笑が注がれ、私は一瞬、相手がキューミオ殿下ご本人で間違いないのかさえ疑ってしまった。
 隣にいたルーミス殿下も気分を害したらしい様子が察せられた。
 珍しく怒りをあらわにしておられる。
 嘲笑が、ご自身にも向けられているとお受け取りになられたのかもしれない。
 おそらく対象は私だけだとは思うのだけれども。
 あまつさえキューミオ殿下は、ルーミス殿下の気配が尖ったことなど一切気にせず、それどころか、私が気配一つ揺らさなかったことに対してだろう、器用に不快そうに片眉を上げられて。

「は。なんだ。つまらないな」

 そしてますます、嘲るような態度で肩を竦められる。

「反応一つ示さないとは。まるで能面・・みたいじゃないか。おい、ルーミス、と言ったか。お前の婚約者はロボット・・・・か何かか」

 そんな風なキューミオ殿下のお言葉は、私のこれまで受けてきた王子妃教育や王妃教育を、はっきりと蔑ろにしているに等しいものだった。
 過度に反応を返さないだとか、気配を揺らさないだとかは、貴族として、否、次期王太子妃として当然のことではないか。
 私が、はて、なんと返せば礼儀に反しないだろうかと考えている横で、ルーミス殿下の気配がますます尖って。ぎゅっと怒ったようなお顔をなさったかと思うと、

「……不愉快だ。行くぞ」

 などと吐き捨て、1人踵を返してしまったのだった。
 私はあまりにいきなりのことだったので一瞬、おとなしく突いていくべきかどうか迷った。
 そもそもいったい誰に対しての言葉だったのか。
 だけど、私が迷っている間に、キューミオ殿下はどうやらご自身が声をかけられたと判断したようで。

「あ、おい、待てよ。不愉快ってどういうことだ? なぁ。よっぽどあの女が気に食わないってことだよな? おい!」

 などと後を追いかけて行ってしまって、私は結局、追従するタイミングを逃してしまったのだった。
 あとに残ったのはぽつんと、変わらない表情を崩せない私だけ。
 幸いだったのは、周囲にいた友人たちが、お二人がいなくなったのを確かめた後で近づいてきて、キューミオ殿下のお言葉に憤慨した様子を見せて、私を慰めてくれたことだったろう。

「なぁに、あれ。感じ悪いわ。ルーミス殿下は今更だけど、あれで隣国の王太子なの?」
「ラーファ様、お気になさらなくてよろしいですわ。それより、最後まで屹然とした態度を崩さず素敵でした」

 口々にかけられた声に、私はほんの少し微笑みを深くした。

「ありがとうございます。皆様のお心遣い、とても嬉しいですわ」
「そんな、私達なんてっ……」

 などとやり取りをしながら、心にじわっと黒いしみのようなものが広がったのは間違いがない。
 私はきっと内心では、自分でも気づかないうちに、余程混乱してしまっていた
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