【完結】可愛げがないと糾弾されましたが婚約者にはそこが可愛いと言われたので問題ございません!

愛早さくら

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10・頼る

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 私は、

『出来ない』

 などと言うことは、基本的には許されていなかった。
 精々が、

『出来るように努めます』

 だ。
 もちろん、私にだって苦手なことはあったし、無理だと思うこともたくさんあった。
 その度に口にでも出そうものなら、ひどく叱られたものである。
 それは共に王宮で学んできたルーミス殿下も同じで。
 ルーミス殿下だって、

『出来ない』

 だなんておっしゃらない。

『無理だ』

 とも。
 明言しない時だって、

『最善を尽くす』

 のは、最低限のことなのだから。
 ちなみに私が苦手なのは、剣術や体術などの護身に関するような、体を動かすものと、実は魔法魔術である。
 魔力操作そのものは苦手ではないのだけど、基礎的なものはともかく、応用だとか発展だとかになると、まるで出来なかった。
 そして、ルーミス殿下はあれで、実は暗記だとかそう言うことがあまりお得意ではない。
 もちろん、記憶力が悪いだなんてわけがなく、他よりは苦手という程度。
 だけどともかく私たちは、そのようなことに関してであっても、可能な限り、克服するよう努めてきたのである。だから。

「え~、そんなこと出来ないですぅ~! ねぇ、キューミオ様ぁ、代わりにやって下さいぃ~」

 なんて、甘えながらしなだれかかってるのを見ると、どうしても眉根を潜めてしまいそうになるのだった。
 もちろん、実際にはそんなこと顔になんて出さないけれども。
 ああ、ルーミス殿下は不機嫌なお顔になっておられる。
 ルーミス殿下も別に、ポーカーフェイスが苦手だとかそう言うことはないと思っていたのだけれど、存外にそうではなかったのかもしれない。
 ちなみに媚びてると思わざるを得ない声音でねだられているキューミオ殿下と言えば、満更でもないようで。

「はは、仕方がないなぁ、任せておけ!」

 などと、鼻の下を伸ばしていた。
 正直、みっともないとしか思えない。
 だが、意外とそういった態度を好む者はいるらしく、通りすがりざま、近くで、

「いいなぁ、ああいう風に頼られるのって、ロマンだよなぁ」

 などと言う言葉が聞こえてきたりもした。

(頼る……)

 頼る、か。
 あれが『頼る』になるのか、と思うと、なんだか複雑な気分にもなった。
 少しだけ考えてみる。
 けど、どうにもやはりよくわからない。

「弱音を吐く、ということは、相手に弱みを見せることにもなるから……そう言ったことが信頼の証になるということなのかしらね……」

 知らずポツ、口からこぼれ出た呟きを、この時は周囲で、拾う人などいなかった。
 思えば私は誰かを頼ったことなどないな、と、ぽろり、ほんの少しだけ心が欠けたような気もした。
 否、多分きっとそんなこと、気の所為なのだとは思うのだけれど。
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