【完結】可愛げがないと糾弾されましたが婚約者にはそこが可愛いと言われたので問題ございません!

愛早さくら

文字の大きさ
16 / 26

15・今更だけど

しおりを挟む

 そもそもの話。
 根本的なことになるのだが、私はあくまでもここ、アズエイス王国の王太子である、ルーミス殿下の婚約者であり、隣国であるオシュニル王国の王太子で、ただの留学生でしかなりキューミオ殿下に、わけのわからない言いがかりに近い糾弾をされるような立場にはなかった。
 と、言うよりも、これまで習ってきた貴族教育や王族教育から照らし合わせても、キューミオ殿下の態度がこそ、どう控えめに捕らえても非常識である。
 ただ、それでもオシュニル王国の王族であり、国賓とも言える立場にいらっしゃるのは間違いないことなので、こちらから無作法なことも出来ないと、何も言わずにいるだけで。
 何より、多くの場合、私のそばにはルーミス殿下がいて、ルーミス殿下が不快をあらわにしているというのも大きかった。
 そして、私の態度やそういったものに対する、好悪についての意見であるということも。
 また、学校内でのことであることも踏まえ、私もわざわざ逐一両親やあるいは将来の舅、姑となる国王陛下や王妃殿下に報告したりもしていないのだけれども、キューミオ殿下の言動は、そういった立場などを照らし合わせると、国に対して抗議したって、おかしくないことばかりなのである。
 否、もしかしたら私の知らないところで、すでにそういった話が伝わっているかもしれないほど。なにせ、

(ルーミス殿下は幾度となく不快だと、はっきり口に出しておられたものね……)

 いかに必要最低限のことしか誰かに話したりなどしないルーミス殿下と言えど、それらを両親に報告していないとも思えず、なら、オシュニル王国側はいったいどういうつもりなのかと、私はそのうちに、そんな心配までするようになっていた。
 可愛げがないだとかなんだとか。
 理解しずらい糾弾を、気にしていないと言えば嘘になる。
 だがその反面、大事にするようなことでもないと私は思っていた。
 人の好みなどそれぞれだ。
 どうやら私はキューミオ殿下に、なんだかひどく嫌われているようだけれども、それがいったい何だというのだろう。

(私がどんな人間なのか、だとか……)

 そんなことは、本来ならキューミオ殿下には関係のない話なのだ。
 もちろん、隣国の王族、特に次期国王たる王太子と、我が国の王太子の婚約者、つまり将来的には王妃の立場に着く関係というのは、全く関わり合いにならずに済むようなものではなく、友好的であればあるほどいいだろう立場であるのは確かではあった。
 あくまでも外交だとか、そういった意味で、である。
 だが、それにしても。
 学生生活が過ぎれば過ぎるほど、あまりに謂れのないことばかり言われ続ける物だから、私はだんだんと疲れ始めてきている部分があった。

「ラーファ嬢! 貴方は本当に……なぜいつまでもそのような態度なのだっ! もう少しとるべき態度というものがあるだろうっ!」

 こんな風にまた、理解しづらいことを言われても。
 加えて、隣に侍っている女生徒が、こちらに向けて何故か勝ち誇ったような眼差しをしてきているのもよくわからない。
 私はいつも通り返答に窮し、ただいつも通りの微笑みを崩さずにいるだけで精一杯で、そして。

「いい加減にしろっ! 不愉快だと言っているだろうっ!」

 と、怒りをあらわにしたルーミス殿下がどこかへ行ってしまうのもいつも通り。

「おい、ちょっと待てよ! お前の婚約者だろう?! いいのかっ?!」

 なんて、付きまとうかのよう、キューミオ殿下がその後を追っていくのも。
 私はやはりいつも通り、ただ彼らを変わらないままの微笑みで見送るばかり。

「……とは言え、もうじき学生生活も終わりますしね……」

 ついうっかり、そんな風に呟いた言葉は、殿下方には届かなかったようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話

鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。 彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。 干渉しない。触れない。期待しない。 それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに―― 静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。 越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。 壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。 これは、激情ではなく、 確かな意思で育つ夫婦の物語。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

処理中です...