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21・嬉しくて
しおりを挟む私はこれまでてっきり、私とルーミス殿下との婚約はあくまでも政略的なものにすぎず、ルーミス殿下には嫌われているとばかり思ってきた。
なにせルーミス殿下は常に無表情で無口で、関り自体が薄いのだ。
ただ真面目で優秀な方なので、婚約者としての義務を淡々とこなしているのだとばかり。
もっともそれは、高等部に入って、キューミオ殿下へのご様子を見るにつれ、実はそんなこともなかったのかもしれないと何処かで思い始めてはいたけれど。
だけれども、まさか、誉れだとまで称してもらえるだとかは、全く思ってもみなかったのである。
キューミオ殿下はすっかり勢いを失くして、狼狽え切っていた。
現状が理解できない、という風にも見える。
ルーミス殿下のお言葉は、まだ更に続くようだった。
「貴殿がこれまで聞き苦しくも悪しざまに上げ連ねてきた、貴殿曰くの可愛げがないところなど、私には可愛い部分にしか思えない。そこがこそ、可愛いのではないか。もっとも、貴殿にそのようなことを理解してもらう必要もまたないのだがな。我が婚約者がいかに健気で愛しいのかなど、私だけがわかっていればいいのだから」
私は、頬が真っ赤に染まってしまっているのではないかと、そんな気がして仕方がなかった。
今は流石に、平気な顔が出来ているだとかは全く思えない。
なんてことだろうか。
こんなことでは、今まで受けてきた教育に反してしまう。けど。
嬉しくて。
嬉しくて嬉しくて仕方なくて。
ルーミス殿下は可愛いとおっしゃった。
私のことを、可愛いと、そうおっしゃったのである。
キューミオ殿下がこれまで上げ連ねてきた、可愛げがないと言ってきた部分がこそ、可愛いのだと。健気で愛しいと、そう。
それでどうして、平気な顔など出来るというのだろう。
思わず顔を伏せてしまう。
嬉しさがあふれてしまう表情を、周囲にあからさまに見せてはいけない。咄嗟にそう、思ったからだった。
ルーミス殿下のお言葉はまだ止まらない。
「ともあれ、貴殿の言動はあまりに目に余る。これまでのことも随時、帰国には報告、抗議させて頂いていたが、今日のこれはより強く抗議せざるを得ないようだ。こちらの方こそ、貴国との付き合いは今後、考えさせて頂かなければならないかもしれないな?」
最後まで淡々と、初めから同じ調子で話し続けたルーミス殿下はだけどキューミオ殿下へと注がれる眼差しを怒りも露わな、きついものとしたままだった。
キューミオ殿下が愕然とした顔をしている。
その顔には現状が全く理解できない、そう書いてあるようにも見えた。
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