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24・気付いたこと
しおりを挟むその後、気を取り直して行われた夜会では、特に問題となるようなことは何も起こらなかった。
それどころか皆、むしろ初めにあった、キューミオ殿下の起こした騒動になど関わりたくないと言わんばかりに匂わせるようなことを口にすることすら避けていて。
早々に逃げてしまった、キューミオ殿下の傍らによく控えていた女生徒は、あの後全く見かけなかったところから、おそらく会場そのものから出てしまったのではないかと思われる。
私にとってはどうでもいいことだったので、追いかけるようなものでもない。
そもそも彼女は、これ見よがしにキューミオ殿下の側にいたし、キューミオ殿下のお話から、あることないことキューミオ殿下に吹き込んでいた可能性こそあれど、直接的に私やルーミス殿下に何かをしていたということは全くなく、何か咎められるようなことがあるとしたら、別室に向かわれたキューミオ殿下が、その先でいったい何をどうお話しなさるのか次第だろうと思われた。
もっともその内容や態度もまた、キューミオ殿下ご自身の今後の状況には影響してしまうだろうけれども。
それもまた、私には関係のない話。
だってキューミオ殿下はあくまでも他国の人なのだ。
私に対しての態度など含め、すでに国から抗議などをしているとのこと。
それ以上はキューミオ殿下ご自身の国の中でのお話となる。
高騰などで責め立てられる以上のことは、何もされたりしていないということも大きかった。
もちろん、それらだって十分に問題ではあるのだけれど。
そんなことよりも重要なのは、あの騒動の折のルーミス殿下のお言葉の方。
あれほどまでに執拗に、キューミオ殿下には可愛げがないと、全く理解できないような責め立てられ方をし続けた。
私はこれまでそれを、少なからず気に病んでいた部分があったのだ。
だけどルーミス殿下は、そこがこそ可愛いと言っていた。
健気で愛しいのだと。
嫌われてなど、いなかった。
それどころか、あの言葉をそのまま受け止めたならば。
「私を……好意的に思って下さっている」
嬉しくないわけがない。
だって私はもうずっとルーミス殿下をお慕いしてきたのだから。
好きで、好きで。だからこれまで、ルーミス殿下に相応しくありたいと、そう、勉強などもたくさんたくさん頑張ってきたのである。
これまでの全てが報われるような気がした。
ルーミス殿下は変わらない。
口数が少なく、無表情なまま。
だけどあの後から、少しだけ理解できたことがある。
ルーミス殿下から私へと向けられる、その眼差しの中にだけならば少しだけ、他とは違うものがあるのではないかということだ。
私はこれまで、その眼差しだけを向けられてきたので、それがルーミス殿下の当たり前なのだと思っていた。
何故ならそれ以外を目にしたことがなかったからだ。
しかしあの後、私は今までよりも注意深く、ルーミス殿下を見つめることにしたのである。
それをきっと嫌がられたりなどしないと、そう思えるようになったからだった。
そこで気付けたのが、私へと向けられた眼差しと、周囲へのそれの僅かな違い。
私以外を見るルーミス殿下の眼差しは、私へと向けられるそれよりも、どことなく冷たいように感じられたのである。
その事実はつまり私が、ルーミス殿下の特別なのではないか、そう思える証拠のようにも思われた。
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