結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

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3・偽りの学園生活

3-10・女神は心も美しい(ユーファ視点)

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 ティールは健気だった。
 流石は私の女神だ。心までもが美しい。否、だからこそ外見まで美しく見えるのだろう。心が反映されているからこそのあの美しさ。そう考えると内面が美しいことなど当たり前なのかもしれない。
 それに比べてあの女……ああ、いけないいけない、つい口が悪くなってしまう。
 リアラクタ・キゾセア。
 キゾワリ聖国、聖王の第十三王女だとかいう、さして国にとっても重要・・だとは思えない立場の女性。なにせ十三王女だ。王女だけで13人以上いるうちの一人。事前に調べた限りでは、正妃の娘というわけでもなく、それどころか母は貴族でさえないという。
 あの国の良くない噂はよく耳に届いていた。
 とくに国のトップである聖王の評判は良くなく、美しいと評判の少年や少女に見境なく手を出しては権力を笠に家族を人質にとって脅し、何人もの子供を孕ませるのだという。
 そのくせ、作って以降は相手を大切にするでもなく、自分の親族や周囲の人間に魔力を注がせ、出産までを過ごさせるのだとか。勿論、本来は父親が取り上げるべきところを、聖王が立ち会ったことなど一度としてないそうだ。
 正妃だって一度と言わず何度でも入れ替わっている。
 あまつさえ自分子供であるはずの人間にまで手を伸ばしているとかいないとか。
 そんな人間の影響が核だけというのはいいことなのか悪いことなのか。
 彼女のキゾワリ聖国内での扱いだって推して知るべし。見た目だけは悪くはないようだったから、国にいる時に父親に何をされていたのだか分かったものではない。その上でいったい何を言いくるめられてこの国に来ているのだか。
 どうやら私に取り入ろうとしているのだろうということは、この数日のごく短時間でもよくわかった。
 私の隣に常にいるティールを、目の敵にしているようだということも。
 ティールの美しさは彼女にもわかるのだろう。
 だからこそ面白くない。自分より美しいものが自分のターゲットの隣にいて勝てるとは思えないからこそ嫉妬する。敵わないとどこかでわかっているから敵だと思うのだ。
 そうは言ってもあのような態度。
 美しくないことこの上ない。
 嫌悪感しか抱けなかった。
 いくら見た目が少しばかりキレイだからと言って、あれではいけない。
 比べることこそよくはないのだろうけれど、同じ王女のような立場であるピオラ皇女殿下を先に知っていると余計に思ってしまった。
 ピオラ皇女殿下など第一皇女とはいえ、養女なのだ。だが、ナウラティスの王家の者が何人子供がいようと、その全てを慈しんで育てていることは有名な話だった。それは養女や養子も同じで、そもそも、その覚悟なく引き取ったりなどしない。
 ピオラ皇女殿下を見ているだけでも、大切にされてきたのだろうことはよくわかった。
 叔父にあたるのだというティールが、ピオラ皇女殿下を尊重しているのも伝わってきたし、ナウラティスから付いてきたという他の護衛や侍女も二人によく仕えていた。
 ピオラ皇女殿下自身、おっとりとしていて穏やかで、ティールがいなければきっと私は、彼女を伴侶として何の不満も抱かず迎え入れたことだろう。
 そもそもピオラ皇女殿下が我が国に留学しにきたのだって、私との婚約の話を前提としたもので、私の婚約者候補はあくまでもピオラ皇女殿下なのだ。……ティールではなく。
 ピオラ皇女殿下はそれらを踏まえてなお、ティールに惹かれてやまない私に、逆に理解を示してくれた。
 とは言え、応援してくれているだとか、承諾してくれているだとかいうわけではない。
 ただ、仕方がないと困ったように笑っていたのだ。
 其処に嫉妬やティールへの負の感情などは微塵もなく、そういう部分にさえ、あのキゾセア第十三王女との違いが浮き彫りになるようで。
 ますます私はリアラクタ・キゾセア第十三王女への嫌悪を募らせていった。
 ティールへの態度も、本当にひどいのだ。
 今日の昼だって、私たちが朝食を取ろうと食堂に向かったところ、待ち伏せをしていて。

「ごきげんよう、ユーフォルプァ王太子殿下。奇遇ですわね。わたくしも今からお昼なのです。どうぞご一緒致しませんこと?」

 などと私にだけ声をかけてきた。
 端々でティールを睨むことも忘れず。

「はは。少しも奇遇とは思えませんが。どうやらお待たせしてしまっていたようですし。ですが残念です。私はこのティールと、今から昼食を摂る予定なのです。ご一緒するのは難しいでしょう」

 凍り付いたような笑顔を張り付けて返せば、第十三王女も笑っていない目のまま微笑んで。

「あら。でしたらわたくしとご一緒できるはずですわ。きっとそちらの方・・・・・も、ご自身の立場はお分かりであるはず」
「え、と、あの……」

 名前すら呼ばないまま指し示されて、ティールは困ったようにちらと私を見てきた。
 そこにあったのは本当に戸惑いだけで、このようなあからさまな態度を取られているにもかかわらず、ティールは彼女に何か良くない感情を少しだって抱いていないようだった。むしろこれは、彼女のことさえ気遣っているのだろうか。私を咎める色さえ見えた。
 このような人間。ティールが気にかける価値などないというのに。
 私の女神は本当に清らかで美しい。
 私はティールに安心させるよう微笑みかけて、凍り付いた笑顔に戻し、彼女と対峙する。

「そうですね。皆がそれぞれ・・・・・・ご自身の立場をしっかりと把握するべきだと私も思いますよ。勿論、リアラクタ・キゾセア第十三王女も」

 立場というなら。ティールはあのナウラティスの公爵家の人間なのだ。キゾワリごとき小国のしかも第十三王女などが太刀打ちできるはずがない。
 この女は頭が悪いのか。それとも本当にわかっていないのか。
 私が言外に含ませた意味に気付ける程度の知能はあったようで、更に返ってきた彼女からの言葉は、刺々しいことこの上なかった。

「ふふ。本当に殿下はご冗談・・・がお好きなようだわ。わたくしと食事を共にする栄誉をお断りになろうとなさるなんて。それとも遠慮深くていらっしゃるのかしら? 殿下の多感なお心に配慮して、でしたら今日は距離を取ってのお食事と致しますわね」

 本当にどこまでもこの女は何を言っているのか。
 そういうことにしろと示されたところで、私が頷くはずもない。

「私の心への配慮など必要ございませんが、距離を取っての食事となるのは良いことだと思います。ではこれで」
「ええ、ではまた」

 最後まで私も彼女も笑顔のままだった。そんな私達を傍で見ていたティールからは怯えが伝わってきて、本当に少し、私自身も態度を改めた方がいいのかもしれないと思わざるを得ない出来事だった。
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