65 / 206
3・偽りの学園生活
3-26・ファルエスタの現状①
しおりを挟むファルエスタは国としてとても立場が弱い。
18年ほど前に大規模な簒奪劇があり、その際、当時国の中枢にいた者達は軒並み処刑された。
抵抗する時間も与えず、少しでも反抗したものは見境なく、容赦なく、全員の首を物理的に飛ばしたと聞く。
……――他でもない、今、目の前に座る簒奪者であり、前国王でもある王配によって。
今、この国を動かしているのは、その時に大粛清から逃れた従順で臆病な性質の者と、その後、台頭してきた、元は下級貴族や庶民だった者ばかり。
当然この醜聞は周辺国の知ることであり、それも含めファルエスタの国力と評価は一度、地に落ちたと言ってよかった。
ただし、それと庶民や国民の意見とは別だ。
前国王は逆らう者には容赦なかった。在位期間二年の間に彼に注進して首を飛ばされた者は数知れず。一方で逆らわない者に対しては平等で身分を問わず、平民でも逆らわず、従順で優秀な者は重用した。
正直、恐怖に塗れた2年だったと言っていい。しかしそれは彼自身の周辺に限ったことで、そこから遠ざかるほどに別な評価を受けるに至った。
国民や庶民の目線で見て、彼の統治は決して悪いものではなかったからだった。あるいはそれまでの高位貴族が腐り切っていたというべきか。
国が上層部が軒並みすげ変わると、国の体制は当然変わる。
上がいなくなったのだから、変わりは下から出てくることになる。その際、代表に立った元庶民に、優秀な者が多かったのは前国王のただの幸運に過ぎないのだろう。機会をうかがっていた心ある、時流を読むのに長けた者がこのまたとない変化の兆しを逃さなかったのも大きい。
単純に高位貴族が減ったので、かかる費用も当然減り、国民に対する税金が緩和された。
前国王は贅や富に全く興味を示さず、実際の執務は必要最低限で、かけられる全ての時間を王妃の間に捕えた元王太子に割くことに腐心した。
とにかく彼を放さず、部屋から出さず、誰にも会わせなかったと聞く。
そしてそれを邪魔する者には容赦がなかった。
だが、当然、金などどこにもかけない。余った予算は国民へと広く分布されるに至った。勿論、現金を配ったというわけではなく、税の緩和という形で反映されたのである。
処刑した貴族の財も容赦なく没収していて、金が余っていたので、税収が必要なかったのだ。
加えて彼は不正を許さなかった。
と、言うよりは、不正やすり寄りなど、目立つ行為をした者の首を容赦なく何人かはねただけなのだが、首をはねられた者の中に後ろ暗いことに従事していた者が何人か含まれていたものだから、皆、明日は我が身と彼の目につきそうなことをしなくなったのである。
その上、王の目が行き渡らないことで良くないことをしようとした者も、王に気付かれた瞬間に問答無用で首をはねられた。
前国王の正義感のようなものは、ある意味振り切れてはいたが、基準そのものはそれほどおかしなものではなかったのだろう。嘘を見抜く目も持っていた。
実は怠けた者にも容赦はなかったが、しっかり黙々と仕事をしている者には何もしなかった。
誰しもが我が身はかわいい。
死にたい者などいるはずがない。
皆、淡々と自分の仕事だけを誠実にこなした。
そしてそれは国内すべてに波及し、結果的に治安が向上するに至ったのである。
悪いことをすれば首をはねられる。だから、目立たず正しく日々を過ごす。
これまで高位貴族を顧客としていた商人などの一部は国外に出てしまったが、それもいい風に作用し、新しい商いが成り立つための土台へと変化した。
凡そ正しくただの恐怖政治なのだが、減った税収と向上した治安。その二つだけでも国民に受け入れられるには充分で、いろいろあった後、新しい国王の王配に収まった際も、少なくとも国民からの目立った反対はなかったらしい。
ちなみに、前国王に捕らわれていた元王太子が現在のルディファラ王である。同じく目の前にいる。
同時にユーファ殿下の両親でもあった。
17
あなたにおすすめの小説
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる