結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

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3・偽りの学園生活

3-33・噂と結論(ピオラ視点)

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 リアラクタ嬢は目立つ。
 その出自はもとより、容姿の良さも相俟って、行動全てが人の注目を集めずにはいられないのだ。
 勿論、それはユーファ殿下やティールにも同じことが言えた。
 そんな三人が少しでも何かをするとどうなるのか。
 つまり、周囲に行動が筒抜けとなるのである。
 それは当然、学年を超えてピオラの元にも、余すことなく届けられた。噂という形を借りて。

「噂と言いながら、正確・・な所が恐ろしい所ですわねぇ……」

 壁に耳あり障子に目あり。目立つ三人の言動は、いかに人目を避けたところで交わされたことであっても、ほとんど全てが誰かしらの耳目へと届いている。
 ユーファ殿下はおそらくそれらを自覚しているし、逆にリアラクタ嬢は気付いていない。ついでにティールに至っては、立場ゆえ当たり前・・・・すぎてそれらを意識する思考へと至っていないのだと思われた。
 思い至っていたならもう少し、周囲に伝わらないようにするはずなので。勿論、自分の為ではなく、リアラクタ嬢の為に。
 あの人はそういう部分で物凄く詰めが甘いのだ。頭はいいはずなのにいつも少しだけ考えが浅い。

「母様らしいと言えば、母様らしいかしら?」

 だからこそと言えなくもなかった。

「ピオラ様? どうかなさいましたか?」

 耳に届くを聞くともなく聞きながら、つい口から零れ落ちたピオラの呟きを、フォセシアが不思議そうに聞き咎める。
 彼女の耳にも、先程の噂は入っていたと思うのだけど。だからこその問いだろうか。

「あら、様はよして。同じ年の学友なのですもの、呼び捨てで構わないわ」

 彼女の問いには応えず、違うことを口にする。今までにも幾度か告げているお願いに、フォセシアは弱り切った表情で首を横に振った。

「いけません、お許しください、ピオラ様。私には難しいです」

 ピオラとしてはただのお友達でありたいのだけれど。父親に似て厳格な彼女には難しい話であるらしかった。

「仕方がないわねぇ……」
「今のはピオラの我が儘だと思うわ」
「ミディー」

 ほうと、おっとりと溜め息を吐くピオラに、少し離れていたミデュイラがそんなことを笑いながら告げる。少し、名を呼ぶ声に咎める響きを含ませたのはフォセシアだが、勿論、ピオラはミデュイラの態度をこそ歓迎している。
 ミデュイラも慣れたもの、そんなフォセシアには肩を竦めることだけで答えた。結果、次に諦めの溜め息を吐くのはフォセシアとなった。
 いつもの光景と言えば、そうである。

「ピオラが言っていたのは今の噂よぉ、ティール様がまた、リアラクタ様に呼び出されたって」

 何処から話を聞いていたのか、先程のフォセシアの問いにもミデュイラは答えた。
 ピオラも頷く。別にそもそも初めから、誤魔化すつもりも話を逸らすつもりもない。ただ単にピオラにとって、フォセシアからの呼び名の方が重要であったというだけの話である。

「ええ、きっとティールは理解していませんから」

 おそらくは全く、何事も。
 ユーファ殿下の気持ちも、自分たちが周囲からどう見えているのか、ティール自身のリアラクタ嬢への寛容を、周りの者がどう受け止めるのかさえ、本当に全く、何も。
 特に最後など、周囲の耳目だけならわかっていないはずがないのに当然すぎるのか、意識すらしていない。
 ピオラはそれらを特に問題とは思っていなかった。噂は軒並みすべて、リアラクタ嬢に厳しく、ティールに好意的だ。あるいはユーファ殿下に同情的だと言っていい。
 それを含めてもやはり彼らしいと思わざるを得なかった。国を出てさえこれである。
 無自覚な人たらしは性質が悪かった。

「っ……?! それは、また……なんと言っていいのか……」

 流石にフォセシアも、ティールがそこまでだとは思ってもおらず、反射的に息を詰まらせ、ついでに言葉を濁らせた。どちらかというと、ティールと同じタイプとも思える彼女でさえこれなのだから、ティールの無自覚さは言葉にしづらいものでさえあるのだろう。

「国への報告とか、どうしようかなとも思ってしまいますわぁ」

 ひとまず弟たちに伝えるのは確定として、父親にまで話してしまうと、なんだかややこしくなるような気がして。
 ただでさえティールが日中、国にいない現状は、王宮の文官たちに特に大きく負担がかかっている。特に、ティールはそのうち2名ほどを、ここファルエスタに貸し出しているというのだから余計にだろう。
 そんな中で父親まで使い物にならなくなってしまってはもう、目も当てられない。
 国にいないピオラはだからこそ、判断は弟たちに委ねるべきかとも考えた。
 隠すつもりはないけれど、わざわざ伝える必要もないだろう。本当に知りたい情報なら、あの父のことだから、どのような手段を使ってでも入手するのだろうし。
 逆にここでピオラが口を噤むことさえ無駄かもしれないほど。でも。
 藪をつついて蛇を出すつもりもないピオラは、にっこりと微笑んでこう結論付けた。

「とりあえず、国に伝える情報は取捨選択することにいたします」

 友人たち二人は、何とも言えない顔をするばかりだった。
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