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5・新学期と学園祭
5-16・戸惑ったままの、①
しおりを挟むアーディに釘を刺されるまでもない。ティール、否、ティアリィにだって、それほどの猶予がないことぐらいわかっている。
元々、今回の国内視察の手配をしたのはアーディであり、それはあの出来すぎぐらいよく出来た息子が、ティアリィとミスティの間の機微を察して、起こった出来事も踏まえ、時間を置いた方がいいと気を使ってくれたが故のことだった。
ミスティとの、ついていけないすれ違いに、どうすればいいのかさえ分からなくなっていたティアリィは、息子からの厚意に甘えた形となる。
そこから約二ヶ月。時間は充分に取ってもらえたと言えることだろう。
だが、実際にはティアリィは、ちっとも心の整理を、付けられていないままだった。
むしろ心情としては、混迷しているとさえ言ってもいい。
長期休暇中に、妹や母、そして幼馴染みであり、今は妹の伴侶となった、かつての婚約者と話をしたりして、見えてきたことはあるのだが、ティアリィは実のところ、未だにそれらを消化しきれていないままだった。
キゾワリのことなど、危惧が他にあるというのもあるし、何よりミスティに対しての自分の気持ちに、ほとんど変化がないというのもある。
最後に会った時、何故ミスティがあんな行動に出たのかも、結局ティアリィはわからないままだ。
アーディは、ミスティの行動の原因は嫉妬なのだと言っていた。
ユーファ殿下と出かけたが故の抑えきれない嫉妬ゆえだったのだと。
それが、ティアリィには理解できないままなのだ。
否、たとえ嫉妬が理由だとして、なぜあんな行動に出たのか。
あんな、あれほどまでに一方的な。
それもやはりわからない。
ミスティは元々、少し強引な所があった。
もう長く一緒にいる。
そんなことぐらいはティアリィもわかっている。
特に、ティアリィが自身の感情を自覚し、ミスティと上手く向き合えなくなってからは、逃げるティアリィをミスティはその度にいつも捕まえて、そして強引に捕らえてきたのである。
でも、そんな時だってミスティは、いつもちゃんと優しかったのだ。
その手はいつもティアリィを酔わせてくれた。
強引でも何でも、しっかりと、ティアリィへの気持ちを感じられた。
なのにあの夜は。
怖い。
思い出すと、体が震えそうになる。
どうして、あんな。
ティアリィは小さく首を横に振った。
思い出したくない。
そう感じている自分にもまた戸惑い、それさえもいまだにどうやら、受け入れられそうにない自分を、自覚せずにはいられないままなのだった。
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