お前の取り柄は顔以外

愛早さくら

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 俺たちの通う高校は、いわゆる進学校というものになる。
 学力レベルは県内でも上から数えた方が早く、進学率はほぼ百パーセント。その反面、自由な校風が売りの私立高校だった。
 更に運動系の部活動にも力を入れていて、他県からスポーツ推薦で進学してくる生徒も在籍していた。
 そんな中で、和凪は、陸上部のいわゆるエースでありながら、一般入試で入学してきたのだと、教えてくれたのは同じ中学から進学してきた、仲の良い女生徒の一人だった。

「同中じゃないけど、アタシらとは隣の校区だから、家もそんなに離れてないはずだよ。にしても、リユが男子のこと気にするなんて珍しいね」

 言いながら肩を竦めるのはカナ。金に近い色に染めた髪にパーマをかけて、しっかり濃く、長くメイクした睫毛を瞬かせてこちらを見る。
 着崩した制服の隙間からは、下着がちらりと覗いていた。
 俺はそんな彼女の格好になど何も反応せず、

「ふぅん」

 と気のない返事。

「なぁにー、リユ、アンタが気になるみたいだから調べてきてあげたのにー」

 口を尖らせる仕草まで、隙なく整えられているけれど、そうしてこちらを見るカナの目に、色めいた物なんてものはない。
 それと言うのも、

「あ~あ。アタシがかわいーばっかりに、リユは言葉一つ、まともに受け取ってくれないんだからぁ」

 そう不満を口にする通り、自分が俺の恋愛対象から外れているのだと、自覚しているからなのだろう。

「いや、美人だとは思うし、話を聞いてないわけじゃない。いつも助かってるよ」

 心外だとへらと笑うと、

「どぉだかぁー」

 カナは信じていない様子だった。
 それでも険悪な雰囲気にならないのは、彼女の性格故なのだろう。

「あはは! 何言ってんの、カナぁ、リユが興味持つ女子ってことは、つまりそう言うことじゃーん。恋愛対象外ってことはかわいー証明っしょ。喜んだ方がいいんじゃない?」

 ケタケタと笑うのは、やはり同中から進学してきた別の女子、ミズホだ。
 その言葉に、俺は流石に、むっと不機嫌な顔をして見せた。

「それってどういう意味? 俺がこれまで付き合ってきた子たち、みんなかわいかっただろ」

 自慢ではないが俺はこれまで、片手では足りないぐらいの女子と付き合ってきたことがある。そんな俺の恋愛遍歴を把握しているのだろう二人は、また言ってる、とあきれ顔だ。
 俺はこれまで付き合ってきた彼女たちを思い返した。目の前の二人とは正反対な、真面目そうな女生徒が多かったように思う。加えてどこかしら、容姿に個性的な部分のあった女生徒達を。
 とは言え俺も、俺にとっては可愛い彼女達だったけれど、他の者から、あまり容姿を評価されていなかったことぐらい理解している。俺の好みはどうやら、世間の大多数とやらとズレているようだとの自覚と共に。

「ま、リユにとってはカワイかったんだろーけど。流石に、ちょっとね……」
「そーそー、リユってば、他だと馬鹿にされることが多い子ばっかりに声かけるから、ストーカーみたいになっちゃうんじゃん。私らが知ってるだけで何回ある?」
「ああいう子は、リユみたいな男子にちょっと優しくされるだけでのめり込んじゃうんだから、ちょっとはじちょーした方がいいよ? 刺されたりする前にさぁ」

 心配を滲ませた二人の言葉に、俺は反省してますと、わざとらしく体を縮めた。
 ちなみに、顔の造作も整っていれば、服装や髪型などもどちらかと言わずとも派手な彼女らは、それでも勉強は得意な方で、明るい髪色や着崩した制服など、似た所の多い俺とは話が合った。

「でもほんと意外だよね。珍しく女子じゃなく男子見てんなぁーって時でも、リユが見てるの、ちょっとアレな男子ばっかりだったのに……」
「館城ってイケメンじゃん。陸上部のエースでしょ」
「べんきょーも上から数えた方が早いって噂だしねー。リユと同じぐらい?」

 首を傾げる彼女らに、俺はいつも通りの笑顔で首を横に振る。

「だから、そんなんじゃないってば。それにあのでかさだよ? 気にならない方がおかしいっしょ」

 あははと笑う俺に、けれど彼女たちは、どうだかと顔を見合わせるばかりだった。
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