お前の取り柄は顔以外

愛早さくら

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「それで、なんか用があったんじゃないのか」

 わざわざ話しかけてきたのだからと水を向けると、
 カナは、思い出したとばかり目を瞬いて、

「あ、そうだった! 最近ずっとシロキが側にいるからさぁ、タイミングがなかなか……いや、シロキがいるから、逆に大丈夫なのかなぁ……」

 うーんと、何やら思案顔をするので、俺は怪訝に持って顔を顰めた。

「何が?」
「うん。えっと、リユはちょっと嫌かもしれないんだけど、ほら、中三の最後にリユが付き合ってた子、いるじゃん?」

 俺の様子にか、それとも別の理由でか、躊躇いながら話し始めたカナの言葉に、思い出しながら俺は頷く。

「ああ、メイコか」

 中三の最後と言うと、まだほんの数か月前の話なのだが、今はもう随分と遠いような気がした。

「そうそう、そんな名前だった! 眼鏡かけてて、いっつも俯いてて、丸顔の……」

 全体的に少しふっくらとしていてかわいかった。
 中学の最後、年明け頃から付き合って、結局、違う高校になるからと別れてしまった女の子だ。
 わざわざ別れなくてもと、食い下がった俺に、

『なんか、疲れちゃった……』

 と、告げてきたのは彼女の方。

「あの子、県外の女子高に行ったんだったよね?」
「ああ。家から通ってはいるけど、遠いから登下校の時間も会えなくなるしって言ってたはずだ」

 別れると言い出した理由の一つだった。

「だよね。確か、片道1時間以上かかるって」

 カナの言葉に頷く。
 ちなみに俺もカナも和凪も、家から高校までは、電車で二十分ほど。家から駅までの時間を含めてもせいぜい三十分と少しぐらいしか、かからなかった。

「それがどうかしたのか?」

 メイコはもうおそらく、疎遠になる一方だろう元彼女、あるいは同級生だ。

「うん。それがね、なんか、ガッコー、今通えてないらしくて……しかも、この近くで見たって」
「この近くって、この高校の?」

 メイコが行く予定だった学校は、家の方から見てまったくの逆側。加えて、近くの繁華街までならともかく、この高校の近くは住宅街で、用があるとも思えない。けど。

「うん、そう」
「誰か、知り合いが近くにいるとかじゃないのか」
「うーん、どうだろ……」

 なくもないだろうと思われる理由を告げても、カナは難しい顔をするばかり。
 学校に行けていない、と言うのは問題だと思うが、この近辺で見かけたからと言って、それをわざわざカナが俺に教えてくるのがなぜなのかが理解できなかった。

「いや、考えすぎかもしれないんだけど、ほら、リユ、ストーカーみたいなのに付きまとわれたこと、あるじゃん?」
「ああ」

 中学の三年間だけですでに片手の指の数ぐらいには。
 頷く俺に、カナはやはり難しい顔のまま、

「メイコもさ、なんか、様子がおかしかったんだって。夏前ぐらいかな? 見かけたって子が、わざわざアタシに言ってくるぐらいだもん」

 その、カナに伝えてきたという相手も、俺に直接伝えるのは躊躇したのだとか。

「リユ、気を付けておいた方がいいよ。まぁ、シロキがずっとくっついてるから、大丈夫だとは思うけど」

 最後まで心配そうに眉を寄せるカナに、俺は曖昧に頷くことしか出来なかった。
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