【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

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☆56・枯渇(ロディス視点)

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「リティっ!」

 悲鳴のように名を呼びながら、崩れ落ちる体を抱きとめた。
 状況がわからない。
 いったい何がどうなっているのか。
 はっきりわかるのは、自分の魔力が枯渇気味となっているのと、それ以上にリティの状態が良くなさそうなこと。
 なにせ気配が薄い。髪の色も、僅か濃さを増している。
 髪や目の色にまで、目に見えて変化が現れるのは状況が悪い証拠だ。
 どうして。いったい何が。
 わからない、だが、すぐに思い出した。
 そうだ、魔獣……ーーあの時、アンリセア嬢と最後尾を歩いていて、僅かばかり、地面を擦るような音がすることに気付いて慌てて振り返ると、信じられないほど近くに見上げるほど大きな魔獣がいた。
 魔獣は基本的に声を上げたりしないし、気配も薄く、また体重も驚くほど軽い。
 それは存在自体が、魔力の塊と化していて、実体が薄れている所為だ。
 だが、そんな魔獣であっても、秘めた狂暴性と攻撃力は衰えることがなく。

「きゃあああっ!!」

 私が振り返ったことに気付いたのだろう傍らのアンリセア嬢が釣られるように振り返り、そして次の瞬間悲鳴を上げた。
 と、同時、魔獣が手を振り上げるのがわかる。
 悲鳴に引かれたのだろうか、狙いは私ではなく、アンリセア嬢に思われた。
 もっともすぐ隣にいたのであまり大きくは違わないのだが。
 咄嗟に、アンリセア嬢を突き飛ばし、彼女のいた場所へと滑り込んだ。
 次の瞬間襲ってきたのは衝撃だ。
 魔獣の方へと向き直る暇もない中途半端な体勢、痛みだとかなんだとか、それすらもよくわからなかった、ただ。
 私の左腕が腹部を巻き込んで消し飛んだことが分かった。
 しかし、俺が認識できたのはそこまで。おそらくはその衝撃のショックで意識ごと刈り取られてしまったのだろう、次に気が付いた時には目の前に泣きそうな顔のリティがいて、そのまま柔く、心底安堵したと言わんばかりに微笑むと細められた目が閉じられ、ふっと、力が抜けきったとでも言うかのように私に倒れ込んできていたのだった。
 ああ、いったい何が。
 否、わかる、わかっている。
 この状況。わからないはずがない。

「リ……ティ、リティ、リティ!!」

 抱きしめる。
 リティの存在が、気配どころではなくひどく薄い。
 頭ががんがんと痛んでいることも自覚した。
 これはつまり魔力が足りていないということだ。
 だけど、私よりも今はリティの方が。
 リティを抱きしめた腕に、意識を集中させ、魔力を流した、否、流そうとした、その瞬間。

「お待ちくださいっ!」

 遮るように止められて、煩わしさに顔を上げる。
 そこにいたのはサーラ、リティの副官。
 おそらくは先ほどの、アンリセア嬢の悲鳴を聞きつけ、急ぎ戻ってきたのだろう。
 息を切らした彼女が、リティではなく私に手をかけた。

「今は、ロディス隊長、貴方にも魔力が足りていません、そのままではお二人とも、とても持たないっ! これは気休めにしかならないと思います、ですが、」

 言いながら私に触れたサーラの手から、魔力が流れ込んできたことに気付く。
 途端、僅かばかり、頭痛がましになった。
 その魔力を、言われずとも私は自身のそれへと馴染ませ、変換し、その上でリティへとすぐさま流した。
 おそらくは今の私が、リティへ、私以外の魔力を注ぎたくないことを汲んでサーラは俺の方へと魔力を流してくれたのだろう。
 副官に相応しい有能さ。
 だがしかし、もちろん足りない。でも。

「しっかりなさってください。他の者もすぐに参ります、ですから」

 私は頷いた。

「ああ、ああ」

 サーラから魔力を流してもらう、そしてそれをそのままリティへと。

「あ、ありがとう……」

 ぎこちなく、小さく礼を口にしながら、私はただひたすらそれを続けたのだった。
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