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00・プロローグ、あるいは止められない頭痛。
しおりを挟む「貴女に婚約破棄を申し付けますわ!」
どうしてこうなってしまったのか……。
わたしは頭が痛くなりそうだと思いながら、眉をひそめることしか出来ないでいる。
人の大勢ひしめく、大広間でのこと。
場所は王城、煌びやかなシャンデリアの下で、この国の王太子である、テウムニカ殿下の腕をぎゅっと掴んだ、可愛らしい顔立ちと装いをした一人のご令嬢がこちらを睨みつけるようにそう告げていた。
先日行われた、3年ごとに開催されている国内芸術祭の表彰式後の慰労会を兼ねた夜会が、今まさに開かれようとしていた所で、私と共に入場してきた殿下が、顔見知りであった件のご令嬢に呼ばれ、不思議そうにほてほてと近づいたかと思うと、瞬く間に今の状況となっていた。
「え? え? ぁ……え?」
いきなりのご令嬢……――キュディアム子爵家の庶子だというセミュアナ嬢の発言に、心底驚いた様子で殿下がきょろきょろとセミュアナ嬢と私を交互に見る。
その内にみるみる情けない顔になっていって、しまいには、
「ぅ……ぅぇえ……リ、リーシャぁ~……!」
と、私のことを呼びながら泣き出してしまった。
「殿下!」
セミュアナ嬢が咎めたてるように殿下を呼ぶ。
ますます情けない表情になって、こちらへと手を伸ばしてくる殿下。
そんな殿下に先程までより更にいらだった様子のセミュアナ嬢。
周囲には殺気立ち、今にもセミュアナ嬢を拘束せんとばかり、動き出そうとする兵士たち。
ただし、彼女が殿下の腕をがっちりつかんで離さない所為で、行動に迷いが生じているようにも見えた。
当たり前と言えば当たり前、あんな、わけのわからないことを言い出すセミュアナ嬢に、もし万が一にでも拘束する間に殿下を傷つけられでもしたらと、そう危惧しているのだろう。
他にもこの場にいる皆が、困惑と不安に戸惑っているのが伝わってくる。
(ああ、本当に。これはいったいどうすればいいというの……)
私はただただ、痛みそうな頭を、抱えることしか出来なかった。
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