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06・婚約、そして始まりの日。⑥
しおりを挟む私は、自分の性格が、少々厳しいところがあることを自覚している。
面と向かってキツいと言われたことすらあった。
顔立ちも、特に目尻はつり上がり気味で、間違っても優しそうには見えない。
幼い頃から、美人だとかキレイだとか言われることはあっても、あまり可愛いとは称されなかった。
(多分、可愛げってものがないんだろうな……)
とは思っても、だから何なのかとも思う。
否、幼い頃は、思っていた。
両親や祖父母は、そんな私を否定するようなことはなかったし、いい子だ、とか、凛として美しい、だとか褒められることの方が多かったからだ。
特に誰かに反抗的だった、というわけでもないというのもあるのだろう。
あるいはすぐ下の弟が大変にやんちゃで元気だったからというのもあるのかもしれない。
私は大人しいと言われることさえあったのだから。
ただ、例えば見た目や、他にも、色々なことをはっきり明確にしておきたくなる所は、人によっては攻撃的だと感じられるようだということも、年齢が上がるにつれ、悟らざるを得なくなっていく。
それというのも、侍女や侍従、時には護衛の兵士までもが、時にひっそりと交わす噂話を耳にしてしまった為だった。
『リーシャ様はお顔が……』
『厳しいお言葉を頂いてしまって……』
なんて、聞きたくなんてなかったし、そもそも、それ以前に彼らの顔を青ざめさせる姿などだって、見たくはなかった。
そうすると、流石の私も、
(少し、気にした方がいいんだろうか……)
なんて思うようになる。
せめて、表情だとか、言葉尻だとかを、と。
出来るだけ人に対して柔らかく接するように、努めて優しく、優しくと心掛けるようになったのは、それこそ、ティム殿下とお会いするより少しばかり前のこと。
だからティム殿下に対しても、私なりに気を付けて接したつもりだ。
少なくとも、何かあると……――何もなくとも、すぐに泣き出してしまう殿下を責めるような言動は控えていたはず。
先に述べた、体術や剣術を共に学んでいて、殿下が泣き出してしまった時だって、私がしっかりしなければ、と思ったのは心の中でだけで、口に出したりなんてしなかった。
けれどほどなく、そんな気遣いなど、しなくともいいのだと知ることになる。
殿下の前でだけならば、何かを我慢したりしなくてもいいのだと。
それは、確か、殿下と共に色々なことを学ぶようになって、半年ほども経った頃のことだった。
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