【完結】婚約破棄から始まるにわか王妃(♂)の王宮生活

愛早さくら

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 それから。
 リア様から求められることは、随分と頻繁になっていった。
 と、言うよりはおそらく、リア様のお時間に都合がつく限り、求められているのではないかと思う。
 なにせ、毎晩はもちろんのこと、午前中だとか午後だとか、時間にかかわらず、リア様が訪れられるのだから。
 そのタイミングに法則性はなく、お時間も長かったり短かったりまちまちで、人払いはなさるけれども、

「陛下、そろそろ」

 などと呼ばれることもしばしば。

「ああ、わかった……すまない、イーフェ……ぅっ、くっ」

 なんて応えたリア様は、少しばかり乱暴に、ご自身が達することを優先するように動かれて、僕の中に熱を吐き出されるだけ吐き出されて、中断されるようなこともあった。

「ん、んっ、ぁっ……いぇ……お気に、なさらないで下さい……」

 はぁはぁと荒く息を吐き、なんとかそうとだけ返すと、リア様は決まって酷く苦しそうなお顔をなさって、それは真実、僕に申し訳なく思っているのだろうことが伝わってきて。僕の方こそ胸が痛む。
 そもそも、元より僕とリア様は慈しみ合って……愛し合って、行為に至っているわけではない。
 こうしてリア様と、体を交わすようになるまでは、僕はてっきりこういった行為は、お互いに想い合っているが故に至る行為で、それでなくとも双方、あるいは片方の欲の発散か、あるいは事情がある故の義理や義務などか、そういった事情ぐらいしかないのだろうと漠然と考えてきたのだけれど、リア様のご様子を見る限り、違うということは僕にもわかった。
 はじめの……――その、初めての夜の時は。それこそ、義務のようなものもあったのではないかと思う。
 だが、だとしたら夜だけでもいいはずだ。
 僕はまだ子を宿してはいないし、それでこの頻度というのはどう考えても異常で。
 子供を育てる為だとかだと、場合によってはそういうこともあるとは、僕もわかってはいるのだけれど。
 でも、それ以外となると、僕には理由に見当もつかない。
 リア様が僕に、真実そういった欲を抱いておられるわけではないと思う。
 否、ご自身でも制御しきれないほど、そういった欲がお強くておられるとかだろうか。
 その可能性はないとは言えないが、それでは今まではどうしていたのかという疑問が生じてしまう。
 リア様はおそらく、僕と肌を交わしたのが、真実初めてだったのだろうと思われるので。
 その証拠のよう、回数を重ねるほどに、リア様ご自身も慣れてきておられるようなのが僕にもわかるほどだった。
 もちろん、同じよう僕自身も、リア様を受け入れやすくなってきているとは思うけれど。
 何か、ご事情がおありになるのだろう。
 僕と、体を交わさなければならない事情が。

「ぁっ、リア、様ぁっ……あぁんっ、あっ!」

 僕はリア様に揺さぶられながら、そんなリア様のご事情を、いつかお教え頂けるようになるのだろうかと、お教え頂けるようになれればいいなと、そんなことを願っている。

「イーフェっ」

 何より、僕の名を呼ぶリア様のお声が、いつだって苦しそうで。その苦しさを、減らして差し上げたいと思うのだ。

「リア様ぁっ……!」

 僕に出来ることが、ただ手を伸ばし、リア様に縋ることだけだとしても。
 あるとも言えないような、多くもない書類仕事の合間、そんな僕とリア様との日々は、気付けば一月ほども経ってしまっていたのだった。
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