【完結】婚約破棄から始まるにわか王妃(♂)の王宮生活

愛早さくら

文字の大きさ
32 / 63

*23・浮き立つ気持ち

しおりを挟む


「イーフェ」

 僕に触れるリア様の手は、いつも優しい。

「リア様」

 何も変わっていらっしゃらないな、そう思う。
 きっと僕をご自身の妃に迎えることなど、欠片も想定しておられなかっただろうに、僕を大切に慈しんで下さっていることがわかる。

「すまない」

 そんな風に何度も謝って、そっと可能な限り優しく僕に触れてくれる。
 閨の中でも、そうでなくても。

「イーフェっ……」
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ!」

 しっとりと、淫靡な気配のする閨の中、リア様を体の奥深くまで受け入れて、揺さぶられて。僕はリア様に縋りついた。
 だって気持ちよくて、何もかもがよくわからなくなりそうだったから。

「ぅっ、く、ぅっ……イー、フェっ……!」
「ぁっ、やぁっ! ぁんっ……ぁあっ! ぁぁあああっ!」

 触れ合っているところから、リア様の魔力が満ちるかのようだった。
 リア様の魔力に、包み込まれているみたいだ。
 体の奥の深いところでつながって。それで、僕は。ああ、リア様。

「イーフェっ!」
「っ、ぁ、ぁあぁぁあああっ!」

 リア様でいっぱいになる。それだけが僕の全部になっていく。
 ああ、リア様。
 僕はわかっている。
 きっと、リア様以外の、誰に触れられたってこうはならない。
 リア様は、行為が終わると、決まって僕の体の隅々まで労わられた。
 なんて、実際には行為の最中に僕は意識を手放してしまうことが多いから、本当のことはわからない。
 でもわかることはある。
 僕に触れるリア様の手が、優しいってこと。
 だって、いつもそう。行為の時のみならず、僕に触れるリア様の手はいつも優しくて。慈しみに満ちて。
 あの時から、ちっとも変わらない。
 僕の髪を、ハンカチ越しに拭って下さった時から。
 ううん、もしかしたら初めて会ったあの幼い頃に、抱き上げて下さった時から。
 リア様はいつも、僕に大切に触れて下さるのだ。
 大切に、大切に僕を扱って。でも謝りながら、僕を揺さぶって。長く、何度も揺さぶり続けて。

「あっ! あっ! もぉいやぁっ! こわいぃっ! ぁあっ!」

 あまりに激しい快感に頭が眩んで、時に逃げたくなることもあるけど、だけど決して放してなどくれず、

「すまない、イーフェ、イーフェ、すまないっ……ぅうっ!」

 何度も何度も謝りながら、それでも僕を手放さず。
 そんな風に行為自体は、時に性急だったり強引だったりすることもある。
 特に、昼間来られて求められる時なんて、準備する時間も充分に取れないから、下肢だけ露出され、押し込まれるようなこともあった。
 だけどそんな時でも、リア様の手が優しくなかったことなんてない。
 僕に触れるその手指に、労りと慈しみを感じなかったことなんて一度も。
 だからこそ僕はリア様に触れられることが、全然まったく嫌いじゃなく、むしろ幸せにすら感じていた。
 満ち足りているし、もっと触れていてくれてもいいと思う。
 勿論、リア様にも僕にも立場やすることがあって、そんなわけにもいかないのだけれど。
 ここ一月ひとつきほど、リア様が視察に出られるようになって、昼食をほとんど共に摂れなくなり、僕は寂しさを感じていた。
 朝食や夕食も、時折ご一緒出来ないことがあったから余計に。
 だけどそんな視察も、もうそろそろ終わると聞いていた。
 そうしたら以前のように・・・・・・共にいられるようになると。
 否、それどころか。

「イーフェ、子供を……そろそろ成さねばならなくなると思う。視察が終わればすぐにでも。婚姻式及びお披露目の前に、可能なら安定・・させてしまいたい」

 少しばかり言いにくそうに、そんなことまで申し出られて。僕は頬が熱くなるのを、止めることが出来なかった。
 だって子供だ。僕とリア様の子供。
 勿論、王妃である以上、次代を作ることが重要な役割であることはわかっている。
 そもそも初めから、婚姻の後は早急にと言われていた。……――相手がティネ殿下だった時からのことだ。
 それが、リア様とになったからと言って、変わるとは思えないし、現状この国の王族はティネ殿下とリア様のみ。時代が早急に必要なことなんてわかり切っている。
 いくら婚姻式とお披露目がまだだとは言っても、僕はすでに王妃。すぐにでもと急かされることは何も不自然なことではない。ただ。
 子供を、為せば。安定するまでのひと月ほどの間は、きっと僕はリア様から、ほとんど離れられなくなる・・・・・・・・・・・・のだろう、なんてことを想像してしまって。なんだか恥ずかしく思ってしまうだけ。
 夜しか体を繋げていない今でさえ、僕はついていくのに精いっぱいだというのに、前のように、否きっと前以上に、リア様とそんな行為に励まなければならなくなるはずだ。
 それがなんだか居た堪れなくて恥ずかしくて、だけど決して嫌ではなかった。
 僕が昼間、リア様がいない時にでも、

「リア様……」

 なんて、ぼんやり思いを馳せてしまうようになったのは、きっと今更、本当に僕がリア様の妃なんだなって、実感できてきているからかもしれないし、僕が、リア様のことを好きすぎるからなのかもしれなかった。
 そんな僕を、ケーシャやデオ、ヨーヌなんかは呆れたように、あるいは温かく見守ってくれていて。
 勿論、アレリディア嬢との胃が痛くなるばかりな『お茶会』は続いていたし、かつてリア様の婚約者だったという方のことだって気になってはいる。
 とは言え、リア様が視察を終えられたら、子供を成す必要がある関係上もあって、アレリディア嬢との『お茶会』は出来なくなるだろうと言われていたし、元婚約者だという方のことも、すでに終わった話で考えたって仕方がないこともわかっていて。だから僕は、なんだかふわふわする気分を持て余しながら日々を過ごすようになっていた。
 僕を見る冷たい眼差しがあることになんてちっとも気付かずに。
 リア様の視察が終わられたのは、それからほどなくのことだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

処理中です...